2013年12月14日、15日に、JST-CREST共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」研究領域主催による展示「みらいの ふつうの つくりかた」が、日本科学未来館で開催された。
 

科学技術研究のイノベーションのためのシーズ創出を支援する事業として、科学技術振興機構(JST)のCRESTと呼ばれる戦略的創造研究推進事業がある。これは、JSTの定める戦略目標に向けて、複数の研究者がチームを構成して5年程度の期間で研究を実施するものである。上記の「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」研究領域は、文字通り、人間と情報環境の調和を実現する基盤技術構築に向けて、ヒューマンインタフェース、センサ・ディスプレイ技術、コンテンツ技術など様々なアプローチで研究が進められている。

今回の「みらいの ふつうの つくりかた」は、この研究領域の4つの研究チームを中心とした合同のオープンラボ&研究成果展示会である。「みらいのふつう」と題されたように、会場の展示には日常生活での利用を見据えて設計された一見カジュアルな(そして実は高度で最先端の)研究が多く並んだ。そこで示された未来の“ふつう”を、いくつかピックアップして紹介したい。
 

東京大学石川研究室/篠田研究室による「調和型ダイナミック情報環境」プロジェクトで紹介されたのが、kHzオーダーでリアルタイムに動作する高速センサ技術および提示技術を用いて、手のひらなど動く物体の上に、映像や触覚情報などをリアルタイムに投射するシステム。近年のプロジェクションマッピングのブームの中で、静止物体のみならず動物体に対しても映像を重ねようとする取り組みも見られるが、従来では物体の動きに対して機器応答の遅れが目立ち、表現に制約が出ることが多い。これに対して、この研究ではまさに情報と実体が一体化し、実世界がより自然に拡張される未来を垣間見ることができる。

慶應義塾大学舘研究室の「さわれる情報環境」プロジェクトでは、触覚に焦点を当て、触覚提示技術から触覚を用いたコミュニケーションやコンテンツ表現のための応用まで幅広いデモが展示された。立体映像に手をかざすと実際に触れた感触を得ることができるなど、より高いリアリティを追求しながらも人間への負荷がきちんと考慮された、近い未来の情報提示やコミュニケーションの姿が、実際の体験として実現されている。

筆者自身も研究者として、このCRESTプロジェクトの一部に参加している。近年のクラウドファンディングの仕組みや、インターネット上での成果の発表・共有をうまく用いることで、より手軽に、早いサイクル、手頃なスケールで研究を進められるような環境が整ってきたと感じる一方で、メディア技術やメディア芸術の分野において、このCRESTのようにある程度の期間をかけて、かつ共通の目標を据えて研究者やクリエイターが力を合わせるという大規模な仕組みは貴重とも言える。CRESTの枠組みを活かして、これからまとめられていく研究者の総力の成果、そしてその先に見えてくる未来が注目である。

「みらいの ふつうの つくりかた」

http://crest.tachilab.org/openlab2013/