顔文字ジェネレーター「Newmoticons」がRyder Ripps氏、Jules LaPlace氏、Eric Hu氏によるデジタル・エージェンシー OKFocusから発表された。Ripps氏は2009年からツイッターで「newmoticons」をツイートしてきたが、今回はその活動を装いも新たな「顔文字ジェネレーター」としてウェブに登場させた。Newmoticonsのサイトに行くと、ひとつの顔文字と「絵文字を名づける」という入力フォーム、及び「他の顔文字を生成する」ボタンがある。顔文字に「ピッタリ」の名前を入力フォームに打ち込んで投稿したり、その顔文字が気に入らなければ別の顔文字を生成したりして楽しむことができる。また、別の人が名づけた顔文字の一覧も見ることができ、顔文字とそれに与えられた意味の組み合わせが興味深いものになっている。
ウェブやメールに顔文字を見ない日はなくなってきており、グーグル日本語入力で「顔文字」と入力すると変換候補に「(*^_^*)[にこにこ わーい]」や「\(^o^)/ [にこにこ おわた]」などが出てくる。変換候補に出てくるような馴染み深い顔文字に対しては、多く人がそれを「記号の集まり」ではなく「顔」として認識して、実際の顔が示すようなニュアンスを含んだ「意味」へと瞬時に変換できるようなっている。しかし、「Newmoticons」は生成されたばかりの新しい顔文字であるため、顔文字と与えられた意味の関係を読み解くのは一筋縄ではいかない。いくつか例を見ていきたい。
-♡‿♡- ━━► 3look(三度見):これはわかりやすい。新たな顔文字として広まるかもしれない。
⊂(✖▿✖)つ ━━► Can't Believe It(信じられない):少しわかりづらい。
ლ,ᔑ^人^ᔐ.ლ ━━► pizza pie(ピザパイ):まったくわからない。
◤⇀-↼◥ ━━► angry pug(怒っているパグ):なんとなく納得。
╭•͡˘ゝ•͡˘╮ ━━► huhuhu(フフフ):ニュアンスが伝わってくる。
連想ゲームに近いものがあるので、ここで私が感じたものとは異なる印象を受ける人も多いと思われる。このような感じで Newmoticons が大量に生成する顔文字とそれに与えられた名前をしばらく見ていると、人間の「顔認識」の能力の高さに驚くともに、「顔」と認識するところまでは同じであっても、それを言語化すると千差万別であることにも驚かされる。「顔文字」は単純な記号の集まりで表情の繊細な変化を表せるために、人間の認識能力が意味を立ち上げる瞬間を体験できる領域なのかもしれない。
また、林智彦氏と千房けん輔氏によるデジタル・エージェンシーnuuoは「ウズベキスタンの美女たちに顔文字をやってもらった。」というプロジェクトを行っている。これは日本の顔文字を知らないウズベキスタンの人たちに最低限の意味だけを教えて、自分の顔で顔文字を表現してもらうものなのだが、サイトに上げられている画像を見ていると顔文字を真似た女性の表情豊かな顔によって「顔文字」が普段よりも活き活きした感じに見えるのが面白い。顔文字が「顔」から生まれたことを改めて認識させてくれるプロジェクトである。
OKFocusとnuuoによるプロジェクトを並べてみると、「顔文字」が人間の顔認識能力の高さから生まれたことを実感できるとともに、言語はその認識能力に追いついていないが、顔文字の産みの親にあたる「顔」自体は顔文字が示す意味の微妙なニュアンスを表現できることもわかる。その能力を活かしてウズベキスタンの美女たちが「顔文字」を真似て表情を作ったように、顔文字ジェネレーター「Newmoticons」から生成された顔文字を真似た新しい表情が生まれるかもしれない。
Newmoticons
ウズベキスタンの美女たちに顔文字をやってもらった。