2017年2月26日(日)に、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAにて、レクチャー・コンサート「五線譜に書けない音の世界〜声明からケージ、フルクサスまで〜」が開催される。京都市立芸術大学芸術資源研究センターの記譜法研究会が進めているプロジェクトの一環で、昨年度に続く第2回目の開催となる。今回は、「図形楽譜」をキーワードに取り上げ、音楽や演奏のあり方にどのような変化が起きたのかを解明する。

この企画のポイントは、以下の3点が挙げられる。第1に、仏教の声明の記譜法とジョン・ケージの記譜法との関連を取り上げること。図形楽譜と言えば、現代音楽に限られると思われているが、仏教の声明にも線的・図形的な表記が見られ、ジョン・ケージの図形楽譜とも類似している。図形楽譜という観点から、伝統音楽と現代音楽の接点をさぐる試みになるという。また、第2点目として、美術家と協同し、図形楽譜に音と視覚の両面から取り組むことが挙げられる。さらに第3点目として、1960年代からフルクサスのメンバーとして活動を続けてきた作曲家の塩見允枝子(芸術資源研究センター特別招聘研究員)に、五線譜以外の記譜法による新作を委嘱し、それを音として実現する。

レクチャー・コンサートのプログラムは2部構成となっている。第1部「声明とジョン・ケージ」では、藤田隆則(日本伝統音楽研究センター教授)による「声明の記譜法について」のレクチャーの後、龍安寺の石庭の石の稜線を使ったケージの楽譜を、僧侶が声明の唱法で歌う。また、同じくケージの作品『Variations II』の実演では、図形から得られる数値を使って、音の出る物体(音響彫刻、映像など)を美術家と共同で制作し、この作品のこれまでにない実現方法を試みるという。第2部「記譜法の展開」では、日本の現代音楽における記譜法についてのレクチャーを、竹内直(音楽学部・日本伝統音楽研究センター非常勤講師)が行う。事例として2作品が取り上げられる。足立智美の『Why you scratch me, not slap?』は、映像を楽譜と見なして、映像内の身振りをもとにギターを演奏する作品。また、一柳慧の『電子メトロノームのための音楽』は、図形楽譜の指示にもとづき、電子メトロノームのクリック音などによってパフォーマーが演奏する。そして最後を締めくくるのが、塩見允枝子による新作『カシオペアからの黙示』の演奏とトークとなる。

このように、このレクチャー・コンサートは、伝統音楽と現代音楽、美術という異なる領域の交錯する地平において、「記譜」という共通の問題を多角的に考えようとする試みである。また、ジョン・ケージ、フルクサス、足立智美、一柳慧といったトピックは、現代音楽のみならず、メディアアートの領域からの関心も大いに引き付けるだろう。(敬称略)

開催概要

日時:2017年2月26日(日)14:30開場/15:00開演
会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
参加無料:要予約(先着順)
http://www.kcua.ac.jp/arc/information/40/