カナダ国立映画制作庁(通称NFB)は、2013年11月4日、 英語アニメーション部門の最高責任者であるエグゼクティブ・プロデューサーに、日系人プロデューサーのマイケル・フクシマ氏が就任することを発表した。フクシマ氏は、前職のロディ・マクナマス氏が今年5月に辞した同職を引き継ぐことになる。

フクシマ氏は日系3世のカナダ人で、1984年から映画制作に携わるようになった。監督としての代表作はNFB製作のドキュメンタリー映画『Minoru: Memory of Exile』(1992年)で、太平洋戦争勃発後に始まるカナダにおける日系人への差別(強制収容所での抑留や日本への送還など)を父ミノルの人生を題材にして語るこの作品は、アニメーション映像と家族写真や当時の新聞などアーカイブ素材を用いて作られ、1994年、世界有数のドキュメンタリー映画祭Hot Docsで最優秀短編ドキュメンタリー賞を受賞するなど高い評価を受けた。

フクシマ氏は1997年にNFBのアニメーション部門のプロデューサーに就任した。その最も重要な功績は、カナダ国内の若手アニメーション作家を対象にした育成プログラム「ホットハウス」(2004-)である。「ホットハウス」は若手作家に、ポストプロダクションを含めたアニメーション映画制作の過程を12週間で体験させ約1分間の作品を完成させるプログラムで、これまで、マルコム・サザランド氏やパトリック・ドワイヨン氏など、現代カナダのアニメーション・シーンをリードする様々なアニメーション作家を輩出している。

2011年、アニメーション作家の山村浩二氏が『マイブリッジの糸』によって日本人としては初めてNFBとの間のアニメーション作品の国際共同製作を成功させたが、その際のカナダ側のプロデューサーもフクシマ氏である。

NFBは1939年設立の国営の映画製作スタジオで、1941年にアニメーション部門を立ち上げて以来、ドキュメンタリーと(主に短編の)アニメーションという市場的にニッチとなりやすい分野で著しい業績を上げてきた。英語とフランス語の二カ国語が公用語であるというカナダの状況を反映して、アニメーション部門は英語パートとフランス語パートに分かれているが(スタジオの所在地はともにモントリオール)、英語アニメーション部門の過去の同職には、200以上の作品を担当した伝説的プロデューサー、デイヴィッド・ヴェラル氏などが就任しており、フクシマ氏はその歴史に新たな一歩を記すことになる。

NFB公式HP内のプレスリリース

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