1997年の開館以来、日本のメディアアート領域を牽引するNTTインターコミュニケーション・センターの年間常設展「OPEN SPACE 2014」が、今年(2014年)も6月21日にオープンした。メディアアートを取り巻く多様な表現を幅広い客層に、という考え方のもとで、ある種の入門編のような位置づけで展開される展覧会である。今年度の展示も、12の作品展示に加えて、筆者も今年度参加しているが大学等研究期間での先端的な取り組みを紹介する研究開発コーナー、新進気鋭の若手作家を紹介するエマージェンシーズ!など盛りだくさんの内容である。
展示物の中には、昨年度以前から常設されている岩井俊雄氏の《マシュマロスコープ》や、グレゴリー・バーサミアン氏の《ジャグラー》などの名作に加えて、今年は先週(6月18日)の記事にも取り上げられていたとおりジェフリー・ショー氏の《レジブル・シティ》や、阿部修也氏の《アベ・ヴィデオ・シンセサイザー》が実際に復元され体験できる形で展示されている。決して歴史が長いとも言えないメディアアート領域だが、その中で年々劇的な変化や継承が展開されてきた。テクノロジーの進化と作品性の継承など難しいバランスを含むこれらの展示は、メディアアートを考える貴重な体験の場となっている。
一方で、スティーヴン・コーンフォード氏による壁に多数配置されたカセットレコーダーの挙動によって生成されるサウンドインスタレーション《バイナトーン・ギャラクシー》や、リヴィタル・コーエン氏&テューア・ヴァン・バーレン氏による一連のバイオアート作品《The Immortal》《Nowhere A Shadow》など、海外を中心にした先端的な取り組みも展示されている。他の展示作品を含め、アートとテクノロジー、アートとデザイン、アートと社会など分野の際をつなぎ、時に浮き彫りにするメディアアートの「今」を感じ取るにも充実した構成となっている。
2015年3月8日まで続く会期中には、展示のみならず、出展者を中心としたトークやワークショップなど多様な形式でのイベントも計画されている。また、夏以降には企画展も別途予定されている。メディアアートの魅力に触れる最初の場所として、その歴史を振り返る場所として、あるいはその先端を感じ取れる場所として、今年度もICCに何度も足を運ぶことをお勧めしたい。
ICC
http://www.ntticc.or.jp/index_j.html
ICC OPEN SPACE 2014
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2014/Openspace2014/index_j.html