新ベルリン美術協会(Neuer Berliner Kunstverein、略称:n.b.k.)は、マサチェーセッツ工科大学のACT(The MIT program in Art, Culture and Technology: アート/文化/テクノロジー・プログラム)と共同で「未来のアーカイブ(The Future Archive)」展を2012年6月3日から7月29日まで開催している。
本展覧会は、1970年代から1980年代のMITの高等視覚研究センター(CAVS: Center for Advanced Visual Studies)におけるアーティスティックな研究プロジェクトのアーカイブ資料と、その活動に呼応するような現在のアーティスト、建築家やデザイナーらによる領域横断的な作品を紹介する。また、n.b.k.が所蔵するビデオ・アートを管理するビデオフォーラム(Video-Forum)から、CAVSの教授やフェローらによる映像作品も紹介する。
CAVSは、故ジョージ・ケペッシュ氏(1906–2001、ハンガリー)のコンセプトを受け継いで1967年にMITの建築設計学部(the School of Architecture and Planning)に設立され、ケペッシュ氏やオットー・ピーネ氏(1928-、ドイツ)らなどバウハウスや戦後モダニズムの影響下にある世代が初期のディレクターやフェローを務めた。ウェブサイトによれば、「テクノソーシャル・ムーブメントと呼ばれた(彼らの)急進的で集団的なプロジェクトの数々は、今日における芸術創造の出発点に寄与しうる」と解説する。
ケペッシュ氏は、故ラースロー・モホリ
=ナジ氏(1895–1946、ハンガリー)らとニュー・バウハウス(シカゴ、米国)の設立に寄与し、1943年まで教鞭を執った。1947年から1974年までMITで教員を務める傍ら、『視覚言語(Vision of Language,1944)』や『ニューランドスケープ──造形と科学の新しい風景(The New Landscape in Art and Science,1956)』などの著作によってデザインや新しい芸術を志向する人々に影響を与えた。
ピーネ氏は、1950年代にデュッセルドルフで結成した「グループ・ゼロ」の活動や1960年代後半から展開した「スカイ・アート」など環境芸術(Environmental Art、屋内を含む環境や現象、出来事、アクションなどを取り込んだ表現活動)
で知られる。1981年から不定期に開催した「スカイ・アート会議」の第2回目は1982年のアルス・エレクトロニカ・フェスティバル(リンツ・オーストリア)で併催され、「空中」を舞台にした作品発表や資料展示が行われた。故ナム・ジュン・パイク氏(1932–2006、韓国/アメリカ)とも親交があり、実験的なテレビ番組を共同制作したこともある。1972年にMITへ招聘され、1974年から1993年までCAVSのディレクターを務めた。
本展覧会「未来のアーカイブ(The Future Archive)」を「進行中の洞察的なプロジェクト」と表現する背景には、CAVS周辺の活動をどのように受け止め、どのようにアップデートしていくのかを問い、CAVSアーカイブとその文脈の将来像を見据えていこうとする態度がうかがえる。
新ベルリン美術協会 「未来のアーカイブ」展