2012年は、アメリカの前衛音楽家ジョン・ケージ氏(1912-1992)の生誕100年、没後20年にあたり、これを記念して、内外でさまざまなイベントが実施、計画されている。その一つとして、来る2012年8月26日に「ミュージサーカス」というイベントがサントリーホールにて開催される。これは「サマーフェスティバル 2012」の一環として、サントリー芸術財団(SUNTORY FOUNDATION for ARTS)が主催するもので、監修には、千宗屋氏(武者小路千家15代若宗匠)、白石美雪氏(武蔵野美術大学教授)、岡部真一郎氏(明治学院大学教授)が当たっている。

「ミュージサーカス」とは、ジョン・ケージ氏が、ミュージックとサーカスから作った造語で、単独または同時に行われる独立した演奏、上演からなるマルチメディア・パフォーマンスである。もともとは1967年にイリノイ大学で行われたイベントに付けられた名前だが、彼は、以降さまざまな機会にサーカスというアプローチを応用している。「ミュージサーカス」は、通常の楽曲と異なり、一つの空間を共有しつつも、さまざまなアクションが独立に生起し、移動し、併存する。

プログラムは多岐にわたる。オープニングアクトは千宗屋氏による献茶、珠寳氏による献花、宮田まゆみ氏による献奏が行われる。第1部「ジョン・ケージ・ワールド」では、ピアニストの井上郷子氏、宮田まゆみ氏が演奏し、三輪眞弘氏は「《流星礼拝》(ロング・ヴァージョン)」(2012年)を披露する。さらにジョン・ケージ氏による版画作品の展示、「失われた沈黙を求めて(プリペアド・トレイン)」(1978年)の翻案が実施される樽見鉄道(岐阜県)との中継が予定されている。第2部「トランス・アクション」では、白井剛氏がホールを横断しながら踊り、ホワイエでは珠寳氏による生花が行われ、ギタリストの村治奏一氏による演奏が加わる。他会場との中継も予定されている。第3部「<2012年日本の夏>グラフィティ」では、現代芸術家の杉本博司氏によるサウンドインスタレーションが展示され、クロージングアクト「マッシュルーム・レクイエム」では、福島で「プロジェクトFUKUSHIMA」を開催する大友良英氏と中継による同時演奏がされる。

ジョン・ケージ氏の作曲技法の核心には「不確定性」がある。このイベントも「不確定性」に向かって開かれている。その姿は訪れた者のみが知ることのできるものになるだろう。

サマーフェスティバル 2012

http://www.suntory.co.jp/sfa/music/summer/index.html