東京・中野の中野ブロードウェイ内にある「pixiv zingaro」で、2012年9月20日から10月2日にかけて、「ブラックジャックによろしく原画展」が開催されている。
「pixiv Zingaro」は、イラストコミュニケーションサービス「pixiv」を運営する(株)ピクシブと、アーティスト村上隆氏が率いるカイカイキキが共同で運営するギャラリー。
このギャラリーで「著作権@解禁!!」と銘打って開かれているのが「ブラックジャックによろしく原画展」。漫画家佐藤秀峰氏の『ブラックジャックによろしく』の原画(単行本に使用した元原稿)およびイラスト(雑誌の表紙など)が展示されている。
話題となっているのは、この展覧会が佐藤氏の著作権に対する新しい試み『ブラックジャックによろしく』の二次使用完全フリー化に合わせて開かれているからだ。
2012年9月15日に発表された利用規約によれば、『ブラックジャックによろしく』(『新ブラックジャックによろしく』は含まれない)を使用した、外国語版、パロディ、アニメ化、商品化などあらゆる二次的使用に対し、タイトルや原著作者名などを明示すれば、事前の許諾を求める必要なく使用可能とするというもの。ただし、事後的な報告は求めている。
ギャラリーでは作品の元原稿が並べられ、イラスト(6点)がオークション販売されるという一見オーソドックスな展示がなされているが、スペース中央にパソコンを接続したコピー機が置かれ、版下データを原稿用紙にプリントアウトしたものが無料で配布されている。また、その版下データそのものも13,650円で販売されていた。
すでにマンガ原画の市場が成立している海外においては、著作権による収入は維持しつつも、原稿は売却する作家たちがいる。佐藤氏の試みは逆に、原稿は売却せず、版下データまで提供して著作権による収入を放棄するものだ。ただ東京新聞のインタビューによれば、原画市場の成立を望む旨も述べているので、値段が折り合えば単行本に使用した元原稿までも売却する意思があるのかもしれない。
絵画のように売却することも可能でありながら、本質的に複製芸術であったマンガがこれからどのように著作権と向き合っていくか。デジタルで制作されるマンガが増えはじめ、新しいテクノロジーに対応して著作権法も改正されたばかりの昨今、佐藤氏の試みからは目が離せない。
また、電子書籍ストアBookLiveでは特設ページが設けられ、西原理恵子氏らによる『ブラックジャックによろしく』のパロディ・マンガ企画などが、2012年10月12日発表される予定だ。
「ブラックジャックによろしく原画展」
http://pixiv-zingaro.jp/exhibition/burayoro/
佐藤秀峰氏ホームページ「漫画 on Web」
http://mangaonweb.com/welcome.do
佐藤秀峰氏Facebook
http://www.facebook.com/satoshuho