2012年10月27日から2013年2月3日まで、東京都現代美術館にて「アートと音楽-新たな共感覚をもとめて」という展覧会が開催されている。総合アドバイザーは音楽家の坂本龍一氏。メディアアートではこれまでにも様々なアーティストたちが、音とイメージの融合というテーマに取り組んできた。他ならぬ坂本氏も、1997年に、メディアアーティストの岩井俊雄氏と「MPI×IPM(Music Plays Images × Images Play Music)」という実験的なコンサートを開いている。MIDIピアノとCGを結びつけ、文字通り、音楽でイメージを奏で、イメージで音楽を描くという画期的な試みだった(その年のアルスエレクトロニカ・インタラクティブアート部門にてゴールデン・ニカを受賞)。あれから15年。果たして、音とイメージの関係はどう変化したか。
近年、音楽がビットストリームに還元されるようになった。そのような状況下で、八木良太氏の氷で出来たレコード《Vinyl》(2005年)と、無数の中古ポータブルレコードプレイヤーを針のない状態で再生する大友良英リミテッド・アンサンブルの《with“without records“》(2012年)が目をひいた。いずれもレコード(プレイヤー)という消滅しつつあるメディアの物質性に焦点を当てた作品だ。
15年前、一部の大学や研究機関にしかなかったワークステーションも、もはやそれ以上の性能のコンピューターを誰もが手に入れられる時代になった。例えば、池田亮司氏の作品において、高精細かつ精確に映し出される情報の渦を眺めていると、もはや機械の限界というより、人間の認知的限界すら感じる。他方、そのような高密度な表現とは対照的に、スカッと抜けた軽快でコミカルなアニメーションと効果音の組み合わせで和ませてくれたのが、大西景太氏の《Forest and Trees》(2011年)であった。小作品が集まって群をなしており、Tumblrで共有されるGIFアニメなどを連想させ、現代らしい、ゆるやかな社会的つながりが感じられる。
しかし、15年の変化は、展示物にもあるワシリー・カンディンスキー(1866—1944)やパウル・クレー(1879-1940)の時代から考えれば、所詮は短期的なものにすぎないとも言える。いったいこの先どのような「新たな共感覚」が生まれていくのか。普遍的なテーマだけにこれからも探求が続くだろう。
「アートと音楽-新たな共感覚をもとめて」
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/138/