オランダ・アニメーション・インスティテュート(Nederlands Instituut voor Animatiefilm, 略称NIAf)が閉鎖の危機に陥っている。2011年、オランダでは2013年の文化予算の2億ユーロにも及ぶ大幅な削減が決定され大きなニュースとなっていたが、その影響がアニメーションにも及んだ結果によるものだ。

1993年設立のNIAfは、レジデンス制度による若い作家たちの育成や、オランダのアニメーションのアーカイブ化の試みやアニメーション教育への協力、アニメーション関係の資料の収集・展示など、様々なかたちでアニメーション文化に関わる事業を行ってきた。しかし今回の文化予算の削減に伴い、2013年1月1日以降の補助金提供について、オランダ教育・文化・科学省から全面的なカットを通告された。この大規模な削減に対してはアニメーションのみならず様々な分野で抗議活動があったが、NIAfも今年に入って国内外の様々な作家がアニメーションで抗議デモを行うAnimation Marchを行うなどしていた。

しかし、現実的な問題は解決せず、今月に入って、閉鎖の危機に瀕しているというアナウンスが公式ホームページ上でなされた。その発表によれば、NIAfのある北ブラバント州の芸術顧問会議ではこれまでのNIAfの活動の重要性が認められており、現在はどのような措置が取られるかを注視しているところだという。NIAf自身も様々なインスティテュートへの働きかけによって存続の道を探ろうとしているが、現在のところは今年限りでの閉鎖が現実的なものとなっている。

NIAfのレジデンス制度はオランダ国内の人材のみならず世界中を対象としており、現在もTiny Inventions(日本人の桑畑かほる氏とアメリカ人のマックス・ポーター氏のユニット)による新作Very Long Secondなど三本の短編作品の制作が、作家自身が滞在するというかたちで進行中だった。しかし、今回の閉鎖危機によって、レジデンスの滞在期間が今年いっぱいへと短縮されることが濃厚となっている。

ヨーロッパ圏のアニメーションは国・地域の文化予算を大きな資金源としているケースが多い。近年の不況により、プロジェクト自体が消滅の危機に陥るケースが少しずつ出てきている(以前のニュースでもお伝えしたイギリスのAnimate Projectsの例が代表的なものである)。

オランダにおける今回の事態は、日本においても他人事とは言えないものであり、どのような展開となるのかは今後も注目する必要がある。

NIAfでは、閉鎖の可能性に備え、映画を扱う国立の施設であるEYEフィルム・インスティテュートにコレクションを移管する準備を進めるなど、対策を取りはじめている。

オランダ・アニメーション・インスティテュート
http://www.niaf.nl/en/