アメリカ合衆国サンフランシスコにあるカートゥーン・アート・ミュージアム(Cartoon Art Museum、略称CAM)では、2012年10月13日から2013年3月10日にかけて、「ラブ&ロケッツ30周年展」(Love and Rockets: A 30th Anniversary Celebration)が開催されている。
「ラブ&ロケッツ」は1982年に創刊されたオルタナティブ系マンガ雑誌。ギルバート・ヘルナンデス氏、ジェイム・ヘルナンデス氏、マリオ・ヘルナンデス氏の3兄弟が1981年に発刊した同人誌が元になっている。1982年にファンタグラフィックス社から商業誌として発売され始めた。
アメリカのオルタナティブ系マンガは、アンダーグラウンド・コミックス(Comix)とメインストリーム(スーパーヒーローもの)が、ダイレクト・マーケットと呼ばれる一般流通経路を通さない直販制度を採用するマンガ専門店で合流し、1970年代から1980年代初頭にかけて誕生したとされる。
この時代にアンダーグラウンドはオルタナティブへと移行したのだが、それを象徴するのがアンダーグラウンド・コミックスの代表的作家である、アート・スピーゲルマン氏とロバート・クラム氏それぞれが立ち上げた雑誌「RAW」(1980年創刊)と「Weirdo」(1981年創刊)だった。
しかしながら、アンダーグラウンドとメインストリームの両方にルーツを持つ「ラブ&ロケッツ」は、よりこの新しい潮流を体現していたと言えるだろう。
実際、メキシコ系アメリカ人の文化、単純ではない女性キャラクターなど、扱われたテーマが新しかっただけでなく、読者側が推論して補完することが必要となる洗練されたコマ割り手法(「思わせぶりな指示による補完(uncued closure)」)など、表現面においても後のオルタナティブ系作家たちに与えた影響は大きい。
「ラブ&ロケッツ」は1996年に一旦終了したが、2001年から「ラブ&ロケッツVol. II」として再刊され、現在は「ラブ&ロケッツ:ニュー・ストーリーズ」として刊行が続けられている。
今回のCAMでの展示は、オルタナティブ系マンガ誕生を象徴する「ラブ&ロケッツ」の軌跡をたどろうとするもの。
CAMは1984年から活動を始めていたが、当初は自らの展示スペースを持たず、他館のために展示・企画を行っていた。1987年に『ピーナッツ』の作者、故チャールズ・M・シュルツ氏から寄付を受け、サンフランシスコにミュージアムを設立。5つの展示スペースと図書室を備え、約6千点の原画を保有する。
カートゥーン・アート・ミュージアム
http://cartoonart.org/
「ラブ&ロケッツ30周年展」
http://cartoonart.org/2012/09/love-and-rockets-a-30th-anniversary-celebration/