スミソニアン・アメリカ美術館(Smithsonian American Art Museum、米国)では、ナム・ジュン・パイク(Nam June Paik、1932–2006年、韓国/米国)の大規模な回顧展「ナム・ジュン・パイク──グローバル・ビジョナリー(Nam June Paik: Global Visionary)」が2013年8月11日まで開催されている。
同展覧会では、67作品に加えて、2009年に同美術館へ寄贈されたアーカイブから140アイテム以上の資料展示を通して、パイクの制作プロセスをはじめ、アジア/西洋哲学や科学技術から受けた影響を明らかにしようとする。また、アーカイブを活用したオンラインで展開する関連プロジェクト「PaikBot」では、パイク作品《Untitled (tobot)》(1992年)のイメージを参加者が自由に再配置して作成された画像をTwitterやウェブサイト「Paiklandia (PaikBot Travels)」でシェアできる。Twitterの@PaikBotでは展覧会の情報やパイクのエピソードなどを配信する。
2013年1月23日には、コンサベイター(作品保存の専門家)によるギャラリー・ツアー、2013年4月14日には「Nam June Paik: Art & Process」と題したシンポジウム、坂本龍一氏やスタイナ・ヴァスルカ氏らによるパフォーマンスなどさまざまな関連イベントが予定されている。
同展覧会のキュレーターである、ジョン・G・ハンハート氏(John G. Hanhardt、スミソニアン・アメリカ美術館フィルム・アンド・メディアアーツ部門シニア・キュレーター)は、過去にナム・ジュン・パイクの個展「ナム・ジュン・パイク (Nam June Paik)」(1982年、ホイットニー美術館)や「ナム・ジュン・パイクの世界 (The Worlds of Nam June Paik)」(2000年、グッゲンハイム美術館)を企画した。
同展覧会が2012年12月13日にオープンした後、2013年1月2日から、同美術館のナム・ジュン・パイク・アーカイブの公開が始まった(事前予約制)。パイクの国際的な交友関係を示す書簡、作品プランやパフォーマンス・スコアをはじめとした作品に関する文書、自身も活動に加わった「フルクサス」に関する印刷物の他、パイクのスタジオに残されていたエレクトロニクス機器や個人で収集した玩具や彫刻などが保管されている。
パイク・アーカイブの公開と平行して、ハンハート氏手がけるパイクの逝去後初めての大規模な回顧展からは、単なるパイク作品の保存やアーカイブ活用にとどまらず、「一度ビデオテープにうつってしまえば、人は死ぬことを許されない」語ったパイクの「再生」にも意欲を寄せているように思われる。
スミソニアン・アメリカ術館「ナム・ジュン・パイク─グローバル・ビジョナリー」展
http://www.americanart.si.edu/exhibitions/archive/2012/paik/
ジョン・G・ハンハート氏「BBC News」インタビュー映像
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-20649028