アヌシー国際アニメーション映画祭の公式ホームページのニュースページにて、今年の映画祭に起こる「変化」についての発表があった。

以前「コラム・レポート」内の記事でお伝えしたように、今年のアヌシーは、新たなアーティスティック・ディレクターとして、これまでのセルジュ・ブロムバーグ氏に代わってマルセル・ジャン氏を迎える。アメリカン・カートゥーンや初期映画の愛好者として知られ、テレビのコメンテーターなどとしても活躍するブロムバーグ氏に対して、ジャン氏はカナダ国立映画制作庁で長年プロデューサーを務め、作家性の強い短編作品の製作に長年関わってきた経歴を持つ。

ニュースページからダウンロードできるプレスリリースによれば、今年のアヌシーはポーランド特集と「アニメーション・オフリミッツ Animation Off-limits」という新たな上映プログラムを予定しているという。

ポーランドは旧社会主義圏の国(つまり短編作品を作る国営スタジオが存在していた場所)には珍しく、その国の中心となるような巨大なスタジオを持たず、冷戦期には国内の複数のスタジオがそれぞれの独自色でアニメーション制作を行っており、結果として、狭義での「アニメーション」におさまらない、実験色の強い作品を生み出しつづけてきた。

新企画「アニメーション・オフリミッツ」は、アニメーションの「境界の外」にある作品をピックアップして上映する4つのプログラムで、アニメーションと隣接しながらも、一般的なアニメーション映画祭ではなかなか紹介されづらい実験映画、ビデオアート、影絵などを取り上げるものになる。

ポーランド特集および「アニメーション・オフリミッツ」はどちらも、近年のアヌシーがどちらかといえば取り逃がしていたアニメーションの商業性以外の部分にも光を当てようとするものであると言えるだろう。

今年のアヌシー国際アニメーション映画祭は2013年6月10日から15日まで。なお、今回の記事で取り上げたのは特別上映部門における新たな流れについてのものだったが、映画祭の「華」であるコンペティション部門についても、アーティスティック・ディレクターの交代は、入選作品の傾向にも影響を及ぼすと考えられ、その点にも注目が集まる。作品募集の締切は、長編作品は3月15日まで、短編、学生、依頼作品などそれ以外の部門は2月15日となっている。

アヌシー国際アニメーション映画祭公式ホームページ
http://www.annecy.org/