2013年2月24日、アメリカ・ロサンゼルスにてアカデミー賞の授賞式が行われ、アニメーション関連の賞についても受賞作品が発表された。

長編アニメーション賞を獲得したのはピクサー・スタジオの『メリダのおそろしの森』(マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン監督、2012年)、短編アニメーション賞はディズニー・スタジオの『紙ひこうき』(ジョン・カース監督、2012年)である。

『メリダのおそろしの森』はピクサーが初めて女性キャラクターを主人公としたことでも話題となった。監督のひとりブレンダ・チャップマン氏もまたピクサー・スタジオ初の女性監督であり、『メリダとおそろしの森』の受賞は、12年前に初めて創設された長編アニメーション賞にとっても、『シュレック』(2001年)でヴィッキー・ジャクソン氏(アンドリュー・アダムソン氏と共同監督)以来の女性監督の受賞となった。

『紙ひこうき』は2013年3月末公開予定の『シュガーラッシュ』(リッチ・ムーア監督、2012年)と併映の短編作品で、日本ではすでに2012年の広島国際アニメーションフェスティバルの特別プログラムで上映されており、また、今年に入ってYouTubeディズニー公式チャンネルで全編公開されたこともネット上で大きな話題となった。

ただ、『紙ひこうき』のネット公開は、一連の騒動を引き起こす結果にもなっている。『紙ひこうき』がウェブ上で公開され話題となったことで、短編アニメーション部門にノミネートされていた他の作品も動画サイトにアップされ(去年の段階でアップされていたPES監督の『フレッシュ・グアカモーレFresh Guacamole』を除く)、ノミネート作品すべてがウェブ上で鑑賞可能になるという事態となった。アカデミー賞にノミネートされた短編作品は、ひとつの上映プログラムにまとめられ、アメリカの劇場で公開されることになっているのだが、オンライン上での公開は、映画館側にとっては大きな損害になる。実際、上映映画館からのクレームがあったという理由で、上映プログラムの配給を担当するショーツ・インターナショナルから各ノミネート作品の配給元に対し、アップロードの取り下げの要求が行われ、すべての作品はウェブ上から削除された。その要求の手紙には、アカデミー賞が讃えるのは「劇場公開されている作品であってオンライン公開ではない」のであり、「マーケティングの手段としてオンライン上で無料公開する長編映画は存在しない」ということが書かれている。短編作品は劇場公開の機会が限られる一方、動画サイトの隆盛からウェブ上での大きなブームとなる可能性を秘めているわけだが、今回の一連の騒動は、短編作品をめぐる配給・宣伝をめぐる問題の難しさをあらためて考えさせるものとなった。

アカデミー賞公式サイト

http://oscar.go.com