アメリカ・ペンシルベニア州にあるクッタウン大学のリン・M・カッチ(Lynn M. Kutch)氏は、ドイツ語教師が授業にマンガを取り入れるための資料サイト、「ドイツ・グラフィック・ノベル」(The German Graphic Novel)を開設した。
このページでは、現代のドイツ・マンガが「伝記」「歴史」「音楽」「成人:大人になる」「犯罪」といったカテゴリごとに分類され、粗筋やドイツ語テキストのサンプルと共に、絵柄やコマ割りといったアート・ワークについての紹介もなされている。
大学の授業だけではなく様々なカリキュラムに組み込まれることを想定しており、ドイツ語のレベル指定や、「ティーン向け」「成人向け」「18禁」といったレーティング・マークが付されているのも興味深い。
学校教育にマンガを取り入れると聞くと、美術の時間にマンガを描かせたり、他教科の理解のためにマンガを活用したりすることを想像するかもしれない。
もちろん、このサイトが念頭においているマンガの使い方も、基本的には語学という他教科のためではあるが、それは例えば歴史を学ぶためにマンガを利用するのとは違い、マンガ作品自体の鑑賞も含むことになる。つまり、文学作品を「読む」のと同じように、マンガ作品を「読めているか」について、教師は生徒の理解度を様々なレベルで測ることになる。サイト内で掲載されている、実際にカリキュラムに取り入れた際の目標達成度評価シートを見ると、「p.9において、コマ内の構図が登場人物同士の関係を理解する手助けとなっていることを説明できるか」など、具体的な評価基準が述べられており面白い。
英語圏においては、5年ほど前から学校でマンガを教えることについての参考図書が数多く出版されている。サイト内でもその内の数冊が紹介されているが、マンガの「読み方」の基礎となる理論的解説やボキャブラリーの整理のみならず、マンガの歴史、社会的問題とのつなげ方など、幅広い内容が取り扱われていることが多い。学校教育において、「マンガを描く」ことや「マンガを単なる入口」とするのではないマンガ活用法について考えるために、そして海外における整理された、マンガに関する平均的な知識を知るためにも、一読して損のない資料群だろう。
マンガ資料サイト「ドイツ・グラフィック・ノベル」