東京都江東区にあるギャラリーエークワッドでは、2013年7月12日から9月30日にかけて「トーヴェ・ヤンソンの夏の家−ムーミン物語とクルーヴ島の暮らし−展」が開催されている。
『ムーミン』の作者として知られるトーヴェ・ヤンソンは1914年フィンランド生まれ。来年、2014年には生誕100周年を迎える。
日本ではアニメ作品として有名な『ムーミン』シリーズだが、マンガ版が存在していたことはあまり知られていないかもしれない。1954年にイギリスの夕刊紙「イブニング・ニューズ」で連載が始まったマンガ版『ムーミン』は、世界各国の新聞にも配信され、最盛期には約40カ国で掲載されていたという。この新聞連載『ムーミン』は、日本語でも『ムーミン・コミックス』(全14巻、筑摩書房)などで読むことができる。
マンガになる以前に小説の挿絵として描かれていたムーミン谷の住人たちは、実はそれ以前にも、フィンランドで発行されていたスウェーデン語の諷刺マンガ新聞「ガルム」にしばしば登場していた。この新聞の主筆として活躍していた母シグネ・ヤンソンの後を継ぐように、トーヴェ・ヤンソンもナチス・ドイツを諷刺する政治マンガや、フィンランドにおけるスウェーデン語排斥運動(純正フィン主義運動)を揶揄するようなマンガを数多く寄稿している。そしてこれらの諷刺マンガの片隅に、しばしばムーミンの原型となるキャラクターが描き込まれていた。
今回の展示では、「ガルム」などを始めとして、トーヴェ・ヤンソンの足跡を辿ることができる作品や、家族、友人たちとの写真が並べられると共に、トーヴェ・ヤンソンが夏のあいだを過ごした小屋が実物大で再現されている。これは、電気も水道も通っていないフィンランド湾に浮かぶ岩の孤島に建てられた手作りの小屋で、その質素でありながらも快適そうな造りからは、『ムーミン』を生んだ彼女の感性と世界観が伝わってくるようだ。
ギャラリーエークワッドは、竹中工務店東京本店1階に設けられたギャラリーで、「建築、愉しむ」をコンセプトに様々な展示を行っている。今回の展示も、建築からトーヴェ・ヤンソンの世界にアプローチするきわめてユニークなものとなっている。
ワークショップなども予定されているので、詳しくはリンク先のホームページを参照してほしい。
「トーヴェ・ヤンソンの夏の家−ムーミン物語とクルーヴ島の暮らし−展」