2013年9月22日に閉幕した2013年のオタワ国際アニメーション映画祭の学校ショーリール部門にて、多摩美術大学が最優秀賞を獲得した。学校ショーリール部門は、一般的なコンペティション部門とは異なり、学校単位で数本の作品をまとめたものを競う。今年はイギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アート、日本の東京藝術大学、多摩美術大学の3校が最終ノミネートに残り、そのなかで多摩美術大学が、同部門への初めての応募で見事に栄冠を勝ち取った。
多摩美術大学の学校ショーリール部門へのノミネート作品は、これまで加藤久仁生氏、近藤聡乃氏、水江未来氏をはじめとする日本の若手アニメーション作家を多数輩出してきたグラフィックデザイン学科の作品で構成されている。
そのなかでも、ひめだまなぶ氏は、連作「ようこそぼくです」シリーズの『なにぬねのの』(2012年)が、冠木佐和子氏は『肛門的重苦』(2013年)、『Ici, là et partout』(2013年)の2本が短編のコンペティション部門にもノミネートを果たしていた。ひめだ氏の作品は大学院部門のHonorable Mention(受賞には至らなかったものの審査員の印象に特別残った作品に与えられるもの)となり、また、授賞式の最後には自作のアニメーションに合わせた歌と踊りのパフォーマンスを披露するなど、今回のオタワのなかで非常に目立った存在となった。
ひめだ氏と冠木氏の作品が象徴するように、今年の多摩美術大学の作品は音楽をベースとした高揚感のあるものが揃っており、ショーリール部門での上映において北米の観客を多いに沸かせた。これまで、海外の目から日本の学生アニメーションの拠点として考えられていたのは東京藝術大学だったが(同校も2010年にオタワの学校ショーリール部門にて最優秀賞を受賞している)、今回の受賞により、日本国内では有名だったものの、世界的にはあまり知られていなかった同校の存在を強く印象づけることとなった。
1976年に第1回が開催されたオタワ国際アニメーション映画祭は、北米最大規模のアニメーション映画祭である。名物アーティスティック・ディレクターのクリス・ロビンソン氏の主導のもと、ヨーロッパの映画祭シーンとはまた異なるユニークな傾向のある作品が集まる場として機能している。見本市のテレビジョン・アニメーション・カンファレンスも同時期に開催され、産業的な観点からも重要なハブとしての役割を果たしている。
今年のオタワの長編部門では例年に比べて多くの作品がノミネートを果たしており、そのスタイルも多様であった。グランプリを受賞した『Tito on Ice』 (2012年)は、コミックアーティストとして著名なマックス・アンダーソン氏が自身の新作コミックBosnian Flat Dog(REPRODUKT,2004)のプロモーションのため、ゴミで作ったチトーの人形とともに旧ユーゴ圏の国々を旅するもので、実写ドキュメンタリーとアニメーションと組みあわせたユニークな作品となっていた。
短編部門のグランプリはオランダのアニメーション作家ROSTO氏の『Lonely Bones』(2013年)が最優秀賞を受賞した。ROSTO氏は実写フッテージとフォトリアルでグロテスクなデザインの3DCGを合わせた特徴的な映像スタイルを用い、複数の作品に及ぶ複雑で入り組んだ物語を展開する作家である。氏はウェブコミックやアニメーションなど複数のメディアにわたって1990年代から作り続けている「Mind My Gap」シリーズで有名で、今回の作品はそのシリーズから派生したThee Wreckers三部作の第二部にあたるものとなっている。
オタワ国際アニメーション映画祭公式HP