2013年12月5日、文化庁メディア芸術祭の平成25年(2013年)度受賞作品が発表された。先週のニュースでは、アニメーション部門受賞作品のなかから日本国内製作のTVアニメ・劇場用作品が取り上げられたが、今週は海外作品および短編作品に注目する。

アニメーション部門の大賞に選ばれたのは『はちみつ色のユン』(ユン、ローラン・ボアロー監督、2012年、ベルギー/フランス)。海外作品が同部門の大賞を受賞したのは第3回(1999年度)の『老人と海』(アレクサンドル・ペトロフ監督、1999年、カナダ・日本・ロシア)以来2度目のことで、日本が製作国として名を連ねていない作品としては、初の大賞となる。

2000年代以降、フランスを中心としたヨーロッパ各国ではアニメーション製作に対する助成金制度の整備から、独特の色合いをもった長編作品の製作が活発化してきた。とりわけ、アニメーションを用いたドキュメンタリーや、バンドデシネやグラフィックノベルを原作とした長編アニメーションが新たな流行として目立ってきた印象がある。

『はちみつ色のユン』は、共同監督のひとりであるユン氏が自らの人生を題材としたバンドデシネを原作としており、朝鮮戦争後に国際養子縁組により韓国からベルギーに渡ったユン氏の葛藤を描くこの作品は、バンドデシネ原作とドキュメンタリーというその二つの流れを汲んだものとなっている。すでに国際的な評価も高く、2012年のアヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門の観客賞とユニセフ賞の二冠を達成した。

優秀賞には、短編アニメーションからは『ゴールデンタイム』(稲葉卓也監督、2013年)が選出された。この作品は、米アカデミー賞を受賞するなど全国的に大きな話題となった加藤久仁生監督の『つみきのいえ』(2008年)に続くROBOT製作のオリジナル短編アニメーションであり、日本での公開を2014年1月に控えている。

新人賞には三作品が選ばれた。姫田真武監督『ようこそぼくです選』(2013年)と久野遥子監督の『Airy Me』(2013年)は、ともに多摩美術大学グラフィックデザイン学科の卒業制作として作られた作品だ。以前のニュースでも取り上げたとおり、同校は北米最大のアニメーション映画祭オタワ国際アニメーション映画祭にて、最優秀学校部門に選出された。両作品はその上映作品にも選ばれており、今回の受賞は、その同校の勢いがそのまま反映されたかのような結果となっている。

『ようこそぼくです選』は姫田監督が「うたのおにいさん」に扮して自作の曲に合わせてアニメーションを展開するシリーズの傑作選である。姫田監督はオタワの閉会式にてその作品に合わせたカラオケとダンスのパフォーマンスを披露するなど、単に上映を行うだけに留まらず、活動の幅を広げつつある。

『Airy Me』はベルリン在住の日本人女性アーティストCuusheの同名曲を用いたドローイングのアニメーション作品で、VimeoやYouTubeなど動画サイトを中心に熱狂的な支持を集めている。ほかにも、先日授賞式が行われた第19回学生CGコンテストでも最優秀賞にあたるCampus Genius Award GOLDを受賞するなど、最近の学生作品のなかでは破格の注目を浴びた作品であると言える。

新人賞のもう一作品『WHILE THE CROW WEEPSーカラスの涙―』(2013年)は鋤柄真希子監督と松村康平監督の共同監督作品で、マルチプレーンの撮影装置を用いた切り絵の手法により制作されている。同作は制作費の一部をソーシャルファンディングサイトCAMPFIREにて募集し、目標金額を集めることに成功したプロジェクトとしても話題になった。短編アニメーション製作の拠点が東京に一極集中しがちのなか、京都を拠点に活動を続ける両監督の活動が評価されたことは、ウェブ上での展開も含め、短編作品の地域的な幅を広げるひとつの重要な達成である。

審査員推薦作品では、短編作品受賞作品のうち半分程度の作品の製作国が海外作品となっている。そのラインナップには海外のアニメーション映画祭で必ずしも高評価を受けているわけではないものも含まれており、日本国内の文脈と海外の文脈が交差する場としての文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門の特徴が出たセレクションとなったと言えるだろう。

第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門

http://j-mediaarts.jp/awards/gland_prize?locale=ja&section_id=3