国際ゲーム開発者協会(IGDA)のローカリゼーション専門部会(LocSIG)は2014年4月5日から4月13日まで、第1回「LocJAMコンペティション」を開催する。参加者はフランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・日本語から使用言語を選択し、期間内に元となる英語版のゲームをローカライズし、翻訳の品質を競う。ゲームの国際翻訳コンテストは過去に例がなく、注目を集めそうだ。
IGDAはゲーム開発者を対象とした国際NPO団体で、LocSIGはローカリゼーションをテーマに、様々な活動を行っている。ゲームの大作化やデジタル流通の進展と共にローカリゼーション技術の向上は重要なテーマとなっており、毎年3月に米サンフランシスコで開催されるGDC(Game Developers Conference)では、独自のサミット(会議)も開催している。国内では東京を中心に活動するNPO法人IGDA日本のもとで、グローカリゼーション専門部会(SIG-Glocalization)があり、姉妹SIGとしてイベントに協力している。
参加者は公式サイトから参加申込みをすると、ローカライズ対象となる英語版のゲームをダウンロードできる。ゲームはオープンソースで開発され、ソースコードをエディタなどで開けば、自由に言語部分などを翻訳できる。イベントはオンライン上で実施され、東京を含む世界の各都市では、オフラインで参加できる特設スペースも設置される。
応募作品は言語ごとにプロ部門・アマ部門で審査され、ゲーム翻訳に興味があれば誰でも参加でき、参加料も無料だ。入賞者には協賛企業のスタジオ見学や、翻訳支援ツールのライセンス、業務発注などの機会が与えられる。
本イベントの発起人はLocSIGの副世話人で、都内在住のアラン・デレピアーネ氏。デレピアーネ氏はイタリア出身で、フリーランスのゲーム翻訳者として様々な日本製ゲームのイタリア語版制作に携わるかたわら、ローカリゼーション関係者向けの交流会を開くなど、ゲーム開発者・翻訳者向けのコミュニティ活動を進めている。
デレピアーネ氏によると、ゲーム翻訳は他の翻訳業務に比べて需要が少なく、若手にとって登竜門となるような機会も存在しないことから、今回のイベントを発案するに至ったという。リリースでは「このイベントはインターネットという開かれた場所で、秘密保持契約などの障害なしに、互いに技術やアイディアを競い合い、仕事に対する愛情を共有できる良い機会です」とコメントした。
ゲーム翻訳ではゲームを開発するディベロッパー、販売・宣伝などを行うパブリッシャー、翻訳業務を担当するローカライズベンダー、実際に翻訳を行う翻訳家という各プレイヤーが存在する。このうち翻訳家はフリーランスが多く、小説や映画などと異なり作品にクレジットされる機会も少ないため、知名度に乏しい。本イベントはこうしたフリーの翻訳者の存在感を向上させると共に、翻訳者同士のコミュニティ拡大にも貢献しそうだ。
LocJAMコンペティション