ザグレブ国際アニメーション映画祭(以下、ザグレブ)が、2015年から長編部門と短編部門の両方のコンペティションを、毎年同時に開催することになった。

1972年に第1回目が行われたザグレブは、アニメーションを専門とする映画祭としては最も歴史あるもののうちのひとつ。毎年隣接する時期に開催されるアヌシー国際アニメーション映画祭などと並び、一部で言われるところの「世界4大アニメーション映画祭」のひとつとして、国際的な注目も高い。見本市の併設など産業的側面との融合を目指すアニメーション映画祭の全体の傾向におもねることなく、アニメーション映画祭文化が歴史的に作り上げてきた作家性・芸術性の重視を忠実に守りつつ、実験映画を中心とする25fps映画祭など他の映画祭との連携のなかで、アニメーション表現の革新に評価を与えることについても大きな価値を置いている。

ザグレブは第1回以降、短編作品のコンペティションをメインとして隔年で開催され、2005年から毎年開催になったが、それ以降も、短編作品のコンペティションと長編作品のコンペティションを毎年交互に行うというユニークなかたちをとることにより、上映作品のクオリティを高く保ってきた。

今年(2014年)の夏、ザグレブは、2011年から続くアニメーション作家のダニエル・スルジック氏とのアーティスティック・ディレクターとしての契約をさらに2018年まで継続することを発表、さらに、映画祭プロデューサーの職も、2007年から手がける映画会社フラホップヴェーラ・マトコヴィッチ氏が引き続き担当することを発表していた。今回、短編・長編の両部門を同時開催するという大きな決断が下されたのも、短編作品および長編作品が数として増加傾向にあること、表現の変遷もスピードアップしつつあることといった近年の流れに対応するためという側面もあるだろうが、この長期的な運営体制が確立されたことで、映画祭としての新たな一歩が踏み出しやすくなったことも背景にあるといえるだろう。

ザグレブが短編部門を毎年開催する決定をしたことで、主要なアニメーション映画祭のなかでは、広島国際アニメーションフェスティバルだけが唯一、短編部門のみを隔年開催する主要なアニメーション映画祭となった。また、長編部門と短編部門が毎年交互の開催だった時期には、ザグレブはここ2年間のアニメーションの傾向の総括をする場という役割を背負っていたが、今回の変更は、ザグレブが、アヌシー同様にアニメーション表現の「今」のその全貌をフレッシュに提示する方向へと舵を切ったことにもなる。そのため、アニメーション映画祭シーンを代表する2つの映画祭が、隣接する日程のなかで、どのように異なるラインナップを揃え、どのようなアニメーションの価値観を提示していくのかが、これからは大きく注目を集めることになるだろう。

2015年のザグレブの開催は、6月9日から14日まで(アヌシーは15日から20日まで)。短編部門(40分未満の作品)、長編部門(40分以上の作品)ともに、作品の応募期間はすでに始まっており、締め切りは2015年2月1日まで。短編は2014年1月1日以降、長編は2013年1月1日までに完成した作品が応募対象となる。作品応募に関する詳細は映画祭公式ホームページを参照のこと。

ザグレブ国際アニメーション映画祭
http://www.animafest.hr/en/