大阪府立中央図書館国際児童文学館で、2015年1月25日に「懐かしの街頭紙芝居『少年ローン・レンジャー』とその時代」と題されたイベントが開催される。これは、国際児童文学館の収蔵する紙芝居資料が2014年5月からネット上で公開されたことを受けて開かれるもので、紙芝居「少年ローン・レンジャー」実演のほか、童謡詩人で児童文学研究者の畑中圭一氏による講演会「街角の子ども文化 紙芝居の歩みと今日的意義」や、国際児童文学館ホームページの「街頭紙芝居」に関するレクチャーなどが行われる予定だ。講演会には事前の申し込みが必要とのことなので、リンク先を参照してほしい。
「ローン・レンジャー」は、アメリカで1933年から放送されていたラジオ西部劇ドラマ。マンガやテレビ、あるいは映画などにもなり、戦前から戦後にかけて絶大な人気を誇った。2013年にはジョニー・デップ氏が出演したリメイク版映画がディズニーから配給されたので、タイトルを耳にしたことがある人は多いかもしれない。日本でもテレビドラマ版が1958年から放映され、当時の子供たちは黒いマスクをしたカウボーイに熱狂したと言われる。
マンガ研究者の中で国際児童文学館は重要なアーカイブとしてつとに有名だが、その名が示すとおり、収蔵対象はマンガだけに限らず子供向け資料全般に及ぶ。紙芝居もその収集対象のひとつで、所有している資料のほとんどは、街頭紙芝居の「絵元」であった「三邑会」からの寄贈によるもの。「絵元」とは、作者に紙芝居の制作を依頼し、それを実際に上演する紙芝居屋に貸し出していた組織であり、紙芝居業のシステム内において中心的な役割を担っていた。また、以前にもお伝えしたように、マンガ自身にとっても紙芝居はきわめて重要なメディアであった(メディア芸術カレントコンテンツ関連記事)。
「三邑会」を興した故塩崎源一郎氏(1912-2000)は、自宅に「塩崎紙芝居博物館」を設置するとともに、近年まで紙芝居の実演活動を続けていた。「三邑会(紙芝居総合センター)」は今でも20万枚以上の紙芝居原画を所有・管理し、紙芝居師に貸し出しを行っている。国際児童文学館に寄贈されたのは、塩崎氏が所有していた資料のうちの160タイトル約4000巻(1巻は10枚の原画で構成されている)で、「少年ローン・レンジャー」(全28巻)もその中に含まれる。表紙以外はサムネイルの小さな画像だが、この作品も国際児童文学館ホームページの「街頭紙芝居」で公開されているので、興味のある方は見てみてほしい。
大阪府立中央図書館国際児童文学館の前身は、吹田市の万博記念公園内に設置されていた大阪府立国際児童文学館。2008年から2009年にかけて持ち上がった大阪府の財政難に起因する移転計画は、当時大きな物議をかもした。納本制度によるものではない、出版社との信頼関係による無償の資料寄贈が移転後も継続されるかどうかが心配されていたが、2013年3月に大阪府立図書館協議会から公開された「大阪府立中央図書館国際児童文学館の今後のあり方について」(PDF)によれば、実際移転後に減少していたその数は、関係各所の努力によってその後増加に転じたという。国際児童文学館の所蔵資料数は、児童文学者鳥越信氏から寄贈された約12万点の児童文学関係資料をもとにした約70万点。現在も資料の収集を継続しており、新規資料はホームページ上の「新収古書一覧」で確認できる。
先ほどの報告書では、▽専門的利用の促進▽子どもの読書活動の推進▽児童文化の振興▽情報蓄積・創造・発信(デジタル化資料のネット公開)▽国際性ある事業の展開、の5つが今後検討すべき事業として挙げられていた。移転にあたって前身の施設が保有していた「研究機能」は引き継がれないことになったが、その一部を補完し、上述の「専門的利用の促進」を達成するため、2015年度は「特別研究者」が募集されている。これは、特別に資料を利用しやすい環境を提供し、その研究成果を発表してもらうことで、国際児童文学館の付加価値向上および情報発信の強化を目指すもの。ただし今年度の募集はすでに締め切られている。
「懐かしの街頭紙芝居『少年ローン・レンジャー』とその時代」
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/kamishibai2015.html