アーティストの奥田栄希氏による個展「悲しいゲーム」が、10月17日(土)より東京都文京区にある「Takashi Somemiya Gallery」にて開催された。
個展を開いた奥田栄希氏。後方に同氏が制作したファミコン上で動くソフトが展示されている
【ゲームを題材にしながら、ゲーム性を排除した悲しい体験ができる個展】
本個展は、「ゲーム本来のゲーム性を排除し、生と死や無限を想起させる文字どおり悲しいゲーム作品を制作し、プレイヤーはテレビの中という閉じられた空間の中で、逃げ場もなく、ただ不毛な行為を経験する。」というのがコンセプト。奥田氏は、これまでに古いテレビゲームを題材とした映像や平面表現などを試みており、近年では市販のゲーム機で動作するインタラクティブなゲーム作品の制作に取り組んでいることのこと。
今回の展示品も、ゲームプログラム作成から基板へのハンダ付け、さらにはカセットにパッケージするところまでをすべて手作業で行っている。
【ファミリーコンピュータ上で動く変わったソフトも展示】
会場内には、奥田氏によって制作されたファミリーコンピュータで動作するROMカセット、および絵画が展示されている。4種類のカセットのうち3本はプレイすることが可能で、いずれもアクション・シューティングゲームをモチーフにしており、個展のテーマである悲しさを誰でもが体験できる内容になっている。また、絵画はいずれもゲームソフトの動作中に発生するバグを想起させる画面を印刷したもの。ゲームのキャラクターや背景に描かれたオブジェクトなどが不規則に表示されており、ゲームにおけるバグの面白さや、コンピューターの持つランダム性を平面上で表現した作品となっている。
これまでに懐かしのゲームを展示するイベントは数多く開催されているが、本個展のようにアートとしてゲームを捕らえた個展は非常に珍しい。開催当日、会場を訪れた奥田氏は、「ぜひ会場にお越しになり、お手に取ってお悲しみ下さい。」と話していた。
壁面にはゲームソフトのバグを思わせるような絵画が飾られている
「GLITCH」と名付けられたカセットには、バグを想起させる不規則な絵がランダムで次々に表示されるプログラムが組み込まれている
本個展の開催期間は10月17日(土)〜11月21日(土)まで。入場料は無料。
■奥田栄希氏のプロフィール (※「Takashi Somemiya Gallery」より抜粋)
1985年 東京生まれ。
2011年 東京芸術大学美術研究科絵画専攻修了。
子供的な発想に満ちたアニメーション作品、バグ画面を再構成した平面作品、ゲームの一時停止ボタンを押した際に表示されるPAUSEの文字だけを集めて作られた映像等、TVゲームを題材にした映像作品を多数発表。
関連リンク
・Takashi Somemiya Gallery
http://www.takashisomemiyagallery.com/index.html
・Eiki Okuda.com(奥田栄希氏のホームページ)
(鴫原 盛之)