芸術総合誌「ユリイカ」2011年12月号で、『タンタンの冒険』についての特集が組まれた。これはスティーブン・スピルバーグ監督の映画公開にあわせてのもので、制作として参加した『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの監督ピーター・ジャクソン氏への取材や、映画研究者の加藤幹郎氏の論考など、タンタンの映画に興味がある人にとっても読みごたえのある内容になっている。

もちろんマンガ作品としての『タンタンの冒険』にも多くのページが割かれており、やなせたかし氏、江口寿史氏、島田虎之助氏が日本のマンガ家としてこの作品について思いを語っている。また日本語版の訳者である川口恵子氏が訳しきれない固有名詞の重層性について空想し、タンタン解説本『タンタンの冒険 その夢と現実』(マイクル・ファー著、サンライズライセンシングカンパニー、2002年)の訳者でもある小野耕世氏が、エルジェ氏の生みだす<もうひとつの地球>としてのタンタン世界の楽しみ方を述べている。

あるいは、宝石やファッションとタンタン、ボーイスカウトとタンタン、大衆文学とタンタンなど、興味深い切り口の論考も多数よせられている。

また、「タンタン学者」のひとりであるアポストリデス氏による論考の抄訳や、その訳者である古永真一氏による「タンタン学の冒険」、タンタン専門家の中里修作氏による「『タンタンの冒険』という曲折」と巻末の全話解題および年表など、日本における「タンタン学」への入門として必携の1冊だろう。

「ユリイカ」2011年12月号 特集=タンタンの冒険

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