これまで、欧米ではメディアアートのデータベースやデジタルアーカイブに関する研究や実践がおこなわれてきた。予算や運営組織の問題などで継続されていないプロジェクトも多く見られるが、比較的新しく公開されたものや長期的に運営されているオンラインベースのアーカイブ事例を傾向別に見ていく。今回は、メディアアートに関する組織コラボレーション型の事例を紹介する。

2009年より公開されているGateway to Archives of Media Art(GAMA)は、ヨーロッパにおける文化施設が保有する10,000作品以上のテキストおよびビジュアルデータを集約して閲覧できるプラットフォームである。2007年にプロジェクトが開始された当初は、Ars Electronica Center(オーストリア)、C³ Center for Culture & Communication Foundation(ハンガリー)、Heure Exquise! International centre for video arts(フランス)、Netherlands Media Art Institute / Montevideo(オランダ)等の8施設であったが、現在は19施設のデータが集約されている。

2010年に公開されたMediaartbase.deは、ドイツ国内のZentrum für Kunst und Medientechnologie Karlsruhe(ZKM)、documenta Archiv、Kasseler Dokumentarfilm- und Videofest、European Media Art Festival Osnabrückの4つの組織によってオンラインで展開するデジタルアーカイブである。まだ完全にデータが整備されておらずアクセスに制限があるが、将来的には、欧州連合(EU)における文化遺産のデータポータルサイトであるEuropeanaとの連携も視野にいれて構築が進められている。

このようなコラボレーション型のデジタルアーカイブのいち早い取組みとして、2004年から2007年に実施されたOpen Archiving System with Internet Sharing (OASIS)が挙げられる。残念ながら現在は積極的に活動していないが、ウェブサイトで公開されているメタデータやキュレトリアル・ツールの研究成果は評価できる。

メディアアートのデジタルアーカイブは、デジタル化された資料を蓄積/保存するだけではなく、付随的にデジタル・パブリケーションともいえる役割を担い始めている。ここで紹介したようなコラボレーション型のアーカイブプロジェクトを通して、メタデータはもちろん、膨大な形式があるオーディオビジュアル・データのスタンダード、著作権ポリシー、閲覧用インターフェイスなどを考察して広く共有してくことが課題といえる。

Gateway to Archives of Media Art(GAMA)

http://www.gama-gateway.eu/

Mediaartbase.de

http://dspace.mediaartbase.com/

Open Archiving System with Internet Sharing (OASIS)

http://www.oasis-archive.eu/