第15回文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門で、スマートフォンをバルーンで宇宙に打ち上げ、その様子をリアルタイムに中継する「SPACE BALLOON PROJECT」【WEB】(大八木翼/馬場鑑平/野添剛士/John POWELL)が大賞に輝いた。一方で、これまで同部門の常連ジャンルだったテレビゲームは平成14年度(第6回)以来、9年ぶりに受賞作なしという結果となった。

「SPACE BALLOON PROJECT」はNTTドコモが2011年夏モデルで発売したスマートフォン「GALAXY S II」を地表3万メートルの成層圏に特殊なバルーンで打ち上げ、その模様をUstreamでライブ中継しながら、事前に募集されたメッセージを宇宙から配信するイベント。2011年7月15日・16日・17日の3夜連続で、米ネバダ州から打ち上げられ、総視聴者数は38万人以上を記録した。打ち上げの模様は公式ウェブサイトで視聴できる。

審査委員は「インターネットによる同時視聴体験の共有とソーシャルメディアによる個人的体験をスマートフォンを題材とした広告プロジェクトとしてまとめつつ、作り手の顔も見える手作り感を持たせた」と評価した。また今年度で印象に残った作品はイベント形式が多かったと述べ、背景としてメディア環境の変化を上げつつ、イベントに対する人々のニーズに、最も的確に最大の効率で実現したものとして本作品を位置づけた。

制作環境やデジタル流通の普及に伴い、個人やグループで制作したデジタルコンテンツを世界に商業発信する行為が日常的になっている。いわば「オープン」「グローバル」「フラット」がイノベーションのキーワードとなっているが、パッケージビジネス前提のテレビゲームは、この波に乗り切れないでいる。今年度の受賞結果は、そうした時代の変化を図らずも指し示したと言えるかもしれない。

そのほかの受賞は下記の通り(【 】内は分類名)。<優秀賞>「べろべろ」【映像】(田中秀幸)、「相転移的装置」【遊具】(勝本雄一朗)、「The Museum of Me」【WEB】(田中耕一郎/谷川英司/斎藤精一/坂本政則/村山健)、「アナグラのうた〜消えた博士と残された装置〜」【その他】(犬飼博士/柴崎亮介/飯田和敏/有山一郎/笠島健司/禿真哉)、<新人賞>「デジタル戦士サンジゲン」【ゲーム】(仲村海斗)、「Hietsuki Bushi」【映像】(Omodaka)、「リズムシ」【キャラクター】(成瀬つばさ)

第15回文化庁メディア芸術祭受賞作品プレスリリース

http://plaza.bunka.go.jp/festival/2011/pdf/111215_press.pdf