東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)は2012年1月31日、第14回CSISシンポジウム「空間情報科学のソーシャル・インターフェース」を日本科学未来館で開催した。シンポジウムでは日本科学未来館の常設展示「アナグラのうた 消えた博士と残された装置」を制作したゲームクリエイターも登壇し、空間情報科学とゲームが織りなす可能性について、さまざまな議論が展開された。
空間情報科学とは実世界の情報を計測し、人やモノのふるまいを計算で理解することで、人々の行動を支援するための科学技術のこと。昨年8月に新設された体感型展示「アナグラのうた」では、参加者の行動が常にモニタリングされ、足下に「ミー」というキャラクターとして投影されるなど、本技術がさまざまな形で応用されている。また本作は第15回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で優秀賞も受賞している。
シンポジウムではCSISの柴崎亮介氏と、「アナグラのうた」で演出を務めたゲームクリエイターの飯田和敏氏による、空間情報科学に関する課題設定から始まった。続いて空間情報科学の可能性が交通、ショッピング、医療の分野で、学術的な立場から語られた。最後に「アナグラのうた」の制作に参加したゲームクリエイターも交えて、空間情報科学がもたらす可能性や、応用のアイディアについて、会場も巻き込んで議論がおこなわれた。
ゲーム技術やノウハウを実社会に応用する試みは、「ゲーミフィケーション」などのキーワードで、急速に広がっている。このように「現実をゲーム化」するためには、現実社会における人々のふるまいを定量化する必要があり、計測技術の進化が不可欠となる。そのため本シンポジウムで議論された空間情報科学は、ゲーミフィケーションと相性がよい。その一例が「アナグラのうた」と言えるだろう。
ゲームはこれまでコンテンツとして捉えられてきたが、空間情報科学という、現実社会とつながる「架け橋」を得て、より直接的に実社会に影響を及ぼす存在になる。一方で空間情報科学はゲームやゲーミフィケーションという媒介役を経て、より多くの人に利用される存在となる。そうした可能性を感じさせるシンポジウムだった。
第14回CSISシンポジウム「空間情報科学のソーシャル・インターフェース」