この10年間のゲーム史で、最大の変化の一つといえば、海外で開発されたゲームが驚くほど精緻で、かつ面白くなったことだろう。

かつて海外産のゲームは「洋ゲー」と呼ばれ、つまらないゲームの代名詞だった。しかし今日では、こうした蔑称は当てはまらない。その鍵を握るのが開発中のゲームをチェックし、内容を洗練させる「ポリッシュ(=磨く)」と呼ばれる工程のノウハウなのだが、日本にはほとんど伝わってこなかった。こうした中で本書『ゲームテスト&QA』は、海外の最新事情が日本語でわかる貴重な書籍となっている。

本書で驚かされるのは、体系的に整理された「磨き」のノウハウだ。日本ではこの工程を、プログラムのミスを修正する「デバッグ」という用語でまとめがちだが、本書では「プロダクションテスト」と「QA(Quality Assurance)テスト」という2つのプロセスに明確に切り分けて論じている。

プロダクションテストとはゲームの開発中から作業を開始し、難易度調整をはじめ、開発チームと協力しながらゲームの魅力を高めていく過程のこと。QAテストとは従来のデバッグに近く、開発終盤で作業を開始し、プログラムの意図せぬ不具合を発見して、開発チームに報告する作業のことだ。チーム編成や運用のノウハウ、最新ツールの紹介なども豊富で、極めて実践的な内容になっている。

またテスター志望の学生に対する、キャリアガイド的な内容が充実している点も特徴だ。現状、テスターには専門スキルが不要なため、ゲーム開発者への登竜門とみなされている。しかし、本書ではテスターはプロ意識が必要な専門職と位置づけ、今後は学位や資格を備えた、プログラマーとプロデューサーの中間的なポジションに成長することが求められるという。業界志望の学生には一読の価値ありだ。

ゲーム開発者なら、誰でも知っておくべき内容が詰まっている一方で、業界読み物としても楽しめ、論文リストなど参考資料も充実している。安価な書籍ではないが、企業や学校、チーム単位で購入したい1冊だ。

『ゲームテスト&QA』

著:ルイス・レビー、ジェーン・ノバック

翻訳:株式会社Bスプラウト

出版社:ボーンデジタル

『ゲームテスト&QA』出版社サイト
http://www.borndigital.co.jp/book/detail.php?id=233