「REWIND: Artists’ Video in the 70s & 80s」は、2004年からロンドン芸術大学内セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(Central Saint Martins College of Art and Design, University of the Arts London、英国)、ダンディー大学内ビジュアル・リサーチ・センター(The Visual Research Centre, Duncan of Jordanstone College of Art & Design, the University of Dundee、英国)、スコットランド国立図書館内スコティッシュ・スクリーン・アーカイブ(The Scottish Screen Archive, National Library of Scotland)らが共同で行っている1970年代および1980年代のシングルチャンネル・ビデオおよびメディア・インスタレーションの保存とその活用に関する研究プロジェクト。

「REWIND」は、450作品以上のデジタル・ベータカムによるビデオ/インスタレーション作品を、高解像度ファイルに変換してハードディスクに保存する活動や、それと平行して関連する資料の保管とデジタル化を行う。ウェブサイトの「データベース」では低解像度バージョンの映像作品や各作品に付随する技術情報、エフェメラ(ポスター、チラシ、パンフレットなど)、書簡、写真、インタビュー映像などの一部も公開する。

ウェブサイトで包括的に資料を閲覧できる点が評価できるが、「データベース」では、日本人を含む作家と同列に、本アーカイブの起点だと推察される展覧会「The Video Show」展(サーペンタイン・ギャラリー、1975年、ロンドン)や同展覧会を契機にビデオ・アートをサポートする目的で設立された組織LVA(London Video Arts)を扱っている点は見直しが必要だろう。「作家」「催事」「組織」と性質の異なる対象を同列に扱うことで、メタデータの属性定義が破綻しており、閲覧者に混乱をもたらすからだ。

一方、「REWIND」は2011年5月に「REWIND Italia」に着手し、28カ月間かけてイタリアのビデオ・アート史(1968–1994年)の研究を行っている。同研究では、英国の事例が作品保存に主眼を置いている点と異なり、出来事や催事を主軸にして俯瞰しようとする姿勢がうかがえる。同研究を通して、「作家」「催事」「組織」のアーカイブ資料がどのように紐づけられてデータベースへ落とし込まれていくか注目していきたい。

REWIND: Artists’ Video in the 70s & 80s
http://www.rewind.ac.uk/