フランス国立図書館(la Bibliothèque nationale de France、略称BnF)で、シンポジウム「ピエール・クープリーのコレクション:SFとマンガのあいだで」(Entre science-fiction et bande dessinée, itinéraire d’un collectionneur : Pierre Couperie)が2014年3月11日に開催される。
ピエール・クープリー氏(1930-2009)は、1964年にフランスで設立されたマンガ愛好家たちの研究団体「描画文学研究及び調査協会」(Société Civile d’Études et de Recherches des Littératures Dessinées、略称SOCERLID)創設メンバーのひとりで、フランスにおけるマンガ研究黎明期の重要人物である。
SOCERLIDはフランスにおけるマンガ・マニア第1世代と呼ばれる人たちが設立した団体のひとつであり、ルーブル装飾美術館での展示や、機関誌「Phénix」の発行、国際的なネットワークの形成などを通じ、マンガの文化的地位向上に大きな貢献を果たした。なお、この国際的ネットワークには日本からも小野耕世氏が参加していた。また、今日ではマンガ・フェスティバルとして世界的に有名なアングレーム国際マンガ・フェスティバルも、SOCERLIDが市の職員と協力して1974年に始めたものだ(メディア芸術カレントコンテンツ内関連記事)。
クープリーはこの団体創設メンバーのなかでは中世の歴史を専門とする唯一のアカデミシャンであった。クープリーの手になる論考は、やはりこの時代に書かれたもののなかでも、SOCERLIDよりも前に設立されていた「マンガ・クラブ」(Club des bandes dessinées、略称CBD)構成員についての分析など、その水準の高さがひときわ目立つものだった。社会科学高等研究院(École des hautes études en sciences sociales、略称EHESS)で初めてマンガに関するセミナーを開講したのも彼だ(1978年から1997年まで)。
今回のシンポジウムは、このクープリーの遺品約2,000点が2012年にBnFへ寄贈されたことを受けて開かれるもの。1950年代から80年代にかけての英語のSF資料が中心となっているという。フランスにおけるマンガ愛好家たちのファンダム運動は、SF雑誌の投稿欄での古いマンガについての情報交換から始まったともされるほど、SFとの関係が深い。
実はクープリーの遺品はそれ以前にもアングレームの「マンガとイメージの国際都市」(略称CIBDI)へ寄贈されており、こちらは当時のマンガ愛好家たちの活動を伝える重要なコレクションとなっている。シンポジウム・プログラムにはCIBDI司書の名前も見え、このコレクションについての報告も行われるようだ。
その他の発表者と内容についてはリンク先を参照してほしい。
シンポジウム「ピエール・クープリーのコレクション:SFとマンガのあいだで」
http://www.bnf.fr/fr/evenements_et_culture/anx_auditoriums/f.couperie.html?seance=1223914429498