第17回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が発表され、エンターテインメント部門では1989年のF1グランプリ鈴鹿サーキット予選で、アイルトン・セナが記録した当時世界最速ラップのドライビングを再現するインスタレーション「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」が大賞に輝いた。また優秀賞に「スポーツタイムマシ」「プラモデルによる空想具現化」「燃える仏像人間」「トラヴィス『ムーヴィング』」、新人賞に「ゼゼヒヒ」「やけのはら『RELAXIN’』」「TorqueL prototype 2013.03 @ E3」が輝いた。

「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」のベースとなった走行データは、ホンダが当時レース用に開発した「テレメントリーシステム」で収集されたもの。これは、エンジンやアクセルなどの動きをリアルタイムに計測・解析し、グラフ化してプリントアウトするもので、常勝マクラーレン・ホンダをデータ面で支えた。作品では鈴鹿サーキットに大量のスピーカーとLEDを設置し、当時のドライビングが音と光で再現された。公式サイトでは映像やCGデータで再現された走行シーンなどを視聴できる。

審査委員の岩谷徹氏(ゲームクリエイター/東京工芸大学教授)は贈賞理由で「作者の『データが人の心を動かすことが出来るか』という挑戦とその成果が高く評価された」と解説した。また「しっかりとした基礎データは、時間によって鮮度が落ちることが無く、またメディアの変遷にも左右されずに、表現され続けていく源に成り得る」と評した。

優秀賞を受賞した「スポーツタイムマシン」もまた、モーションキャプチャによって記録された競技者の身体データを再利用するという、「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」と相通じるスタイルで制作されており、おもしろい相似形をなしている。センサーにはXbox 360向けの周辺器機「Kinect」が複数台使用されており、四半世紀の技術革新が感じられる。また岩谷氏の解説は単なる作品評を越えて、メディア芸術全体におけるアーカイブのあり方についても、一石を投じたと言えるだろう。

なお優秀賞と新人賞では「プラモデルによる空想具現化」「ゼゼヒヒ」「TorqueL prototype 2013.03 @ E3」など、例年同様に個人やグループによるインディーズ的な作品の受賞がめだった。文化庁メディア芸術祭の中でも、エンターテイメント部門は領域が非常に広く、他の3部門に属さないものが、すべて集まっている感じがある。その中でもテクノロジーによる個人の表現能力の拡大が、本分野を活性化させていることが窺える。

一方で2007年まで常連だった、いわゆる「テレビゲーム」はここ数年で、すっかり傍流に押しやられた感がある。本年度の応募作品は669作で、ゲームが114作、映像作品が327作、ガジェットが71作、ウェブが78作、アプリケーションが79作で、募集は多いが代わり映えがしない、ということだろう。来年度はPlayStation4、XboxONEと新型ゲーム機の発売も予定されており、どのような作品が受賞するか注目したい。

文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門

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