2014年1月17日から20日までの4日間、ドイツのミュンヘンでメディアアートのアート・フェア「Unpainted」が初めて開催される。
これまで、メディアアートのアート・フェアがなかったわけではないが(例えばC.A.R Media Art Fair)、多くは現代美術のアート・フェア内でビデオを使った映像作品やインスタレーションが付属的に扱われる程度であった。しかし、世界最大級のアート・フェアで毎年注目が集まるアート・バーゼルで「ニュー・メディアの収集(Collecting New Media)」と題したトーク・イベントが2013年開催されたことに象徴されるように、ニュー・メディアを扱う作品の流通について議論され始めた。
このアート・バーゼルのトークイベント(You Tube動画)では、インターネットやコンピューターなど、今日のニュー・メディアを使った作品について言及される一方で、もはやニュー・メディアではないかもしれない「ビデオ」や用語としての「メディアアート」については議論されていない。しかし、オーナーシップへの考え方の拡張や、作品メンテナンスの問題などのネガティブ要素を払拭しようとする態度が積極的に語られる。例えば、ネット・ベースド作品のコレクションとその保存事例として、ホイットニー美術館がコレクションするネット・アート、ダグラス・デイビィス《The World’s First Collaborative Sentence》(1994年)が挙げられた。
同フェスティバルは、50以上のエントリーから選ばれた24ギャラリーや、ZKMやケルンのメディアアートの学校KHMなど関連9団体が出展する他、李振華氏(Li Zhenhua、中国/スイス)のキュレーションによる展覧会「Lab 3.0」が開催される(Exhibitors List参照)。加えて、タミコ・ティールのサテライト・プロジェクト「Transformation」や、トーク・イベント「Challenges in Collecting New Media」「Bringing digital art into the auction house」などの関連イベントも開催される。
同フェスティバルはBig Data、クラウド、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など、極めて今日的なテーマを設定していることからも、いわゆる売れ筋商品の陳列に留まらない、購入者へ向けた挑戦的なメッセージがうかがえる。果たして今後、周辺領域からメインストリームへと船出したメディアアートはアート・マーケットというゲームに打ち勝つための処世術を獲得できるのか、注目が集まる。まずは、そのルールの拡張に働きかけることから始まるのではないだろうか。
メディア・アート・フェア「Unpainted」
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