「アンフォルメルの先駆者」とも評されるドイツ出身のアーティスト、ヴォルス(1913-1951)。

その彼が38歳という短くも濃厚な生涯を通じて制作してきた、写真・水彩画・油彩画・銅版画を中心に約120点で紹介する展覧会「ヴォルス――路上から宇宙へ」が、2017年4月1日(土)から7月2日(日)まで千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館で開催される。「日本における受容を反映しつつ、路上の石や虫を見ながら遠く宇宙までも見通した深い作品世界を紹介し、ヴォルスの再評価の契機」(プレスリリースより抜粋)とする本展はDIC川村記念美術館が誇る充実したヴォルス・コレクションを中心にしており、これほどの規模のものは日本で初めてだという。

展示の構成は3章仕立てとなっており、第1章「写真 路上と台所」では1931年にドイツからフランスへ移住したヴォルスが写真家として成功し、肖像や静物、路上などの写真によって開花させた独創的な才能を取り上げ、第2章「水彩画と油彩画 幻視から宇宙へ」では、ナチスの台頭によるドイツとフランスとの関係悪化で敵国人と見なされたヴォルスが収容所生活のなかで描くようになった幻視的な水彩画と第二次世界大戦後に本格的に始めた油彩画を展示。第3章「挿絵銅版画 文学とともに」では戦後から晩年にかけて、ジャン=ポール・サルトルやジャン・ポーラン、アントナン・アルトーといった名だたる文学者や詩人の依頼でヴォルスが手掛けるようになった挿絵銅版画を紹介している。

以上のようにヴォルスの生涯と展示構成が並行して進むことで、展示会場を巡るうちにヴォルスの数奇な人生を辿ることにもなっている。そしてなにより、本展ではヴォルスの生涯が多種多様な表現メディアに彩られていることにスポットライトが当てられていることに注目したい。1930年代には写真、収容所生活時代には水彩画、そして戦後になると油彩画や銅版画へと表現メディアが次々と変遷していく。その千変万化はまさにヴォルス自身の言葉にもある「サーカス・ヴォルス」そのものである。ヴォルスの全体像を見通す絶好の機会となる本展に是非足を運んでみてはいかがだろうか。

本展の関連イベントとして2つの講演会とスペシャル・ギャラリートーク、担当学芸員によるギャラリートーク、ガイドスタッフによる定時ツアー、そしてヴァイオリンコンサートが予定されている。

関連イベント

講演会1

千葉成夫(美術評論家、本展監修者)「さすらいのなかで―ヴォルスの生涯と作品」
2017年4月15日(土) 13時30分〜15時 @レクチャールーム 13時開場
予約不要・定員50名・入館料のみ

講演会2

高階秀爾(大原美術館館長)「アンフォルメルとヴォルス」
2017年5月13日(土) 13時30分〜15時 @レクチャールーム 13時開場
要予約(2017年4月21日(金)予約開始)・定員50名・入館料のみ

スペシャル・ギャラリートーク

平野啓一郎(小説家)
2017年5月27日(土) 14時〜15時 @エントランスホール 14時集合
予約不要・マイク&スピーカー使用・入館料のみ

担当学芸員によるギャラリートーク

2017年4月1日(土)、6月17日(土) 14時〜15時 @エントランスホール 14時集合
予約不要・定員60名・イヤフォン使用・入館料のみ

ガイドスタッフによる定時ツアー

上記講演会・ギャラリートークの開催日を除く毎日 14時〜15時
予約不要・定員60名・14時エントランスホール集合・入館料のみ

コンサート「ヴォルスが愛したヴァイオリン―バッハを中心に」

木嶋真優(ヴァイオリン)、坂野伊都子(ピアノ伴奏)
2017年6月3日(土) 17時45分開場/18時開演
要予約(2017年3月22日(水)予約開始)・4500円

*予約・問い合わせはDIC川村記念美術館ホームページ(http://kawamura-museum.dic.co.jp/index.html)をご参照ください。

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《無題》1942 / 43年 DIC川村記念美術館蔵

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《ニコール・ボウバン》1933年頃 / 1976年 The J. Paul Getty Museum, Los Angeles蔵

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《構成 白い十字》1947年 国立国際美術館蔵

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《裸体の花》1949 / 62年 DIC川村記念美術館蔵