2012年のアルス・エレクトロニカ・フェスティバルでは、ベルリン芸術大学に新設された修士過程プログラム、サウンドスターディーズ専攻 がフィーチャーされたが、2012年、ヨーロッパにおけるメディアアート関連動向のキーワードの中に「サウンド」があったかのように思われる。2012年3月17日より2013年の1月6日まで開かれている、サウンドアートをテーマとするZKMの大規模展覧会は、その代表的な例であろう。

サウンドアートとは何か。本展は「サウンドアート」を、「見ることと聞くことの知覚的接続、沈黙と空間の相関関係、音の彫刻的な側面、コンサートホール中心的なシステムの崩壊などにより、美術と音楽の中から、独立した芸術形式として変貌してきた幅広い表現領域」として定義している。同時に、館長のペーター・ヴァイベル氏(Peter Weibel)が20世紀初頭の未来派から始まり、両世紀を貫通するサウンドアート論を展開し、共同キュレーターのジュリア・ゲルラフ氏(Julia Gerlach)は、過去の重要な実践と言説を「初めて」メディアアートのコンテクストに位置づける必要性を強調している。

もちろん、以上のような企画意図やサウンドアートをめぐる複雑な文脈を意識しなくても、「音」に関する、あるいは「音」と接する様々な創造性を網羅するこの展覧会を楽しむことはできる。

ZKMが近年取得した「Het Apollohuisアーカイブ」のほか、「Unheard Avant-gardes in Scandinaviaアーカイブ」「Broken Musicコレクション」など、膨大な資料とリサーチも合わせて展示され、それらと約30点の新作が歴史と今日を接続させている。また、観客がiPadを手に、展覧会場の床を横断するサウンドアートの年表から古典作品を自由に選び観賞しながら歩き回ることのできる、ZKM開発のAR(拡張現実)システム「radio-walkway」のようなメディアアート的なアプローチも行われている。聴覚的な体験が中心となる生の演奏ではなく、「展示」という視覚的な枠が中心となるがゆえに、当然ながら「音の視覚的体験への変換」が強調されている本展は、副題通り「芸術表現メディアとしての音」の豊かな可能性を多角的に検証したと評価することができよう。

最後に、鈴木昭男氏(1941年生)から、角田俊也氏(1964年生)、池田亮司氏(1966年生)、三原聡一郎氏(1980年生)と斉田一樹氏(1981年生)まで、本展における幅広い年代の日本人アーティストの活躍は特記しておく必要があるだろう。三原氏と斉田氏の共同作品は、バージョンは異なるが、2012年10月23日より新宿のICCで観賞することができる。

ZKMの「SOUND ART: Sound as a Medium of Art」展
http://soundart.zkm.de/en