ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)の解説書は多いが、筆者の経験則に基づく内容が多く、玉石混合だ。こうした中で本書『インターフェースデザインの心理学 ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針』 (オライリー・ジャパン、2012年)は、科学的な研究に裏打ちされた内容で、かつ読み物としてもおもしろい。
著者のスーザン・ワインチェンク氏は米ヒューマン・ファクターズ・インターナショナル社のUXストラテジー部門責任者で、自称「論文を読むのが大好きという変わり者」(前書きより)。その筆者が自分の業務内容から得られた知見と、それを裏付ける論文を組み合わせ、体系的に整理した書籍が本書である。そのため説得力が高いだけでなく、論文のリファレンス集としても機能している。
例えば、使いやすいウェブサイトをデザインするには、ボタンを適切な大きさにする必要があることは、誰しも同意するだろう。しかし本書はそれだけにとどまらない。人が画面上でマウスを動かしながら確実にたどりつける対象が、どの程度の大きさであるかを計算する「フィッツの法則」を紹介すると共に、ボタンの大きさ一つにも科学的な基準があることを示す、といった具合だ。
もっとも、内容はゴリゴリの技術書ではなく、平易な文章で記されており、読み物としても楽しめる。内容は全10章から構成されており、▽人はどう見るのか▽人はどう読むのか――など、認知心理学や行動原理にまつわる知見が100種類に整理されているため、自分の好きな項目だけ拾い読みすればいい。それでいて内容が奥深いという、非常にお得な1冊だ。
『インターフェースデザインの心理学 ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針』
著:スーザン・ワインチェンク
翻訳:武舎広幸、武舎るみ、阿部和也
出版社:オライリー・ジャパン
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