平成23年度第15回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門の受賞作から、短編作品を取り上げる。
優秀賞を受賞した『マイブリッジの糸』は、日本を代表するインディペンデント作家山村浩二氏の新作であり、短編アニメーション分野で歴史と伝統のあるカナダ国立映画庁(略称NFB)において、日本人として初めて国際共同制作をおこなった作品である。NFB作品は今回、インタラクティブなウェブ作品『BLA BLA』(Vincent Morisset監督)もアート部門で優秀賞を受賞している。
短編作品というカテゴリは、劇場公開アニメーションやテレビアニメーションといった上映形態による区分とは異なり、尺のみが問題となる。それゆえに、興味深い試みを見つけることもできる。たとえば、アニメーション部門の審査員推薦作品のなかには、『BLA BLA』とは違ったかたちで「インタラクティブ」を目指した試みを見出せる。『Animation Hotline』(Dustin Grella監督)は、イラク戦争に従軍し死亡した弟についてのドキュメンタリー・アニメーション『Prayers for Peace』が話題になった作家によるプロジェクトで、ウェブ上に公開された電話番号に残された留守番電話のメッセージを元に、作家が一日でアニメーションを作りアップするというものだ。
『Herr Hoppe und der Atommüll』(Jan Lachauer, Thorsten Löfflerの共同監督)は、主人公ホップ氏が核廃棄物をなんとかして捨てようとする連作シリーズで、公式ページ上に書き込まれる主人公への助言に基づいて新作が作られていく。
短編作品は受賞作品および審査委員会推薦作品をあわせると24作品だが、そのうち学生作品が14本と半数以上を占める。短編は商業的に成立しにくい形態ゆえ、学生作品は世界的に質量ともに大きな割合を占めることになるが、今回の受賞結果にもそれが反映されていると言える。今年は全体的に海外作品が多く受賞したが、優秀賞の『Folksongs & Ballads』(Mathieu Vernerie、Pauline Defachelles、Rémy Paulの共同監督)、新人賞の『Rabenjunge』(Andrea Deppert、Simon Buchner、Sebastian Gasselの共同監督)は、それぞれフランスのシュパンフォコム(Supinfocom)、ドイツのフィルムアカデミーの卒業制作作品である。両校とも3D作品を中心としたアニメーション産業に人材を輩出することの多い学校だ。日本作品でも学生作品優位の傾向は変わらず、新人賞は過去の作品が話題となった石田祐康氏の『rain town』(京都精華大学)、植草航氏の『やさしいマーチ』(東京藝術大学大学院)が受賞した。
アニメーション関連でいえば、広島国際アニメーション映画祭のディレクター木下小夜子氏の功労賞受賞も見逃すことはできない。メディア芸術祭のアニメーション部門は、商業作品や、短編作品のなかでも商業性が強い作品など、広島国際アニメーション映画祭があまり取り上げない傾向の作品をピックアップしている印象がある。広島国際アニメーション映画祭とあわせて受賞結果を見ることで、世界のアニメーションの全体的な傾向を掴むことができるといえるかもしれない(ただし海外の長編アニメーションは除く)。
平成23年度 第15回文化庁メディア芸術祭受賞作品プレスリリース[PDF]