スペインのマンガ市場に関する統計資料「2013年度スペイン・マンガ産業報告書」(LA INDUSTRIA DE LA HISTORIETA EN ESPAÑA EN 2013)が発表された。この報告書をまとめたのは、web上で活発な情報発信を行っている非営利団体のTebeosfera(Asociación Cultural Tebeosfera、略称ACyT、メディア芸術カレントコンテンツ内関連記事)。Tebeosferaは2001年から活動を始め、2009年から非営利団体として登録されている。

Tebeosferaは様々なマンガ関連ニュース記事を配信すると共に、スペインで発行されたマンガ作品、作家、関連書籍(研究書含む)の全カタログ化を推し進めており、その成果はGRAN CATÁLOGO DE LA HISTORIETAとしてweb上で公開されていた。2013年にはその内容を書籍化した『スペイン・マンガ大カタログ:1880-2012』(Gran Catálogo de la Historieta: El CATÁLOGO DE LOS TEBEOS. 1880-2012,
 
2013)も刊行されている。

このTebeosferaが公表した2013年度の統計資料は、2013年1月1日から12月31日の間にスペインで発行されたマンガを主にその発行点数から分析したものだが、スペインのマンガ市場の現状が垣間見えて興味深い。

この資料によれば、2013年に刊行されたマンガは全部で2453点。2012年の2373点と比べるとほぼ横ばい傾向にある。2453点のうち、スペイン作品は753点(約3割)に過ぎず、アメリカ合衆国973点、日本367点、フランス163点など、アメリカ合衆国を筆頭に外国作品の占める割合が大きい。地域別にカウントするとEU(スペイン含む)が1070点、アメリカ大陸が991点、アジア376点(中国5点、韓国4点)となっている。

ちなみに、マンガ評論家・ジャーナリスト協会(Association des critiques et des journalistes de bande dessinée、略称ACBD、メディア芸術カレントコンテンツ内関連記事)の2013年度年次報告書によれば、隣国フランスで2013年に発行されたマンガは全部で5159点。そして新刊3882点のうち、約6割(2257点)を外国作品が占めている(アメリカ合衆国461点、日本1555点など)。

発行部数、単価、刊行頻度など、マンガのビジネス・モデルが異なるため単純には比較できないが、『出版指標年報2013年版』(全国出版協会出版科学研究所、2013年)では、日本で2012年に刊行された新刊のマンガ単行本は約1万2000点で、売上高は単行本と雑誌あわせて3766億円(単行本2202億円、雑誌1564億円)となっている(2014年版は未刊行)。

「2013年度スペイン・マンガ産業報告書」には売上高が記載されていないが、スペイン出版社連盟(Federación de Gremios de Editores de España、略称FGEE)のレポート(PDF)によると、2011年におけるスペイン・マンガ市場の総売上高は9440万ユーロ(約130億円)と報告されている。もちろん日本とスペインでは人口や出版市場全体の規模が異なるので、これも単純には比較できないが、大体の市場規模感はつかめるだろう。

これまでスペインの統計資料としては、スペイン文化省が2010年に行った調査報告書(PDFメディア芸術カレントコンテンツ関連記事)や、Jetroによる「スペインにおけるコンテンツ市場調査」などがあったが、これらは継続的なものではなく、その意味でもTebeosferaの報告書は今後注目に値する試みだろう。

2013年度スペイン・マンガ産業報告書

http://www.tebeosfera.com/documentos/documentos/la_industria_de_la_historieta_en_espana_en_2013.html