コンピュータのハードウェアがまだ不完全であり、専用ソフトが不在だった1980年代、日本のCG関係者たちは、日米の格差を乗り越えられる人材育成の必要性を痛感していた。そんな中、1980年に設立された日本初のCGプロダクション、JCGL(Japan Computer Graphics Lab)のなかに「CGカリキュラム研究会」が発足されたのは、1985年のことだった。この社内研究会は、1988年には、東京工業大学、九州芸術工科大学、武蔵野美術大学などの教員を含めた「画像情報生成処理技術者の育成に関する研究会」として発展した。カリキュラムを通して習得された知識と技術を測定する検定試験をつくる段階で、複数の企業の協力を得て1991年に財団法人「画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)」が設立された。
人材育成の一環として開催されている「学生CGコンテスト」は、1995年から始まり、その審査委員長に故大平智弘氏、源田悦夫氏、そして現在の原田大三郎氏が歴任してきた。過去20年間、時代の認識を反映しながら少しずつ変わってきて、やがて2011年からはCGの意味も「Computer Graphics」から学生の新しい創造性を顕彰するという意味で「Campus Genius」となった。ここからは、CGという言葉を残すことで歴史を尊重しつつ、創作過程のどこかの段階で、必ずコンピュータやデジタルメディアが介在することになった時代を積極的に反映させようとする協会の意識が窺われる。
2014年、学生CGコンテストはその20周年を迎える。20周年記念イベントとして、国内の様々な映画祭、芸術祭と連携して、受賞作品と受賞作家を幅広く紹介していく予定である。第1弾は、7月19日から9月28日まで開催される、札幌初の国際アートフェスティバル「札幌国際芸術祭2014(SIAF)」。札幌国際芸術祭のアソシエイト・キュレータ、学生CGコンテストの審査員の四方幸子氏の選考した第19回受賞作品13点が、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)北三条広場で会期を通じて上映される。また、8月4日月曜日15時から17時までは、同会場で2部構成のイベントが行われる。1部では歴代受賞者のししやまざき氏が自作と活動について語り、2部では、札幌所在の大学でメディアアート/メディアデザイン教育に携わる小町谷圭氏と石田勝也氏が「若手作家にとってのコンテストと芸術祭」というテーマについて議論する。モデレータにつとめるのは、学生CGコンテスト評価員の渡邉朋也氏と萩原俊矢氏、そして審査委員長の原田大三郎氏とCG-ARTS協会の阿部芳久氏。
第20回学生CGコンテスト作品募集は6月26日からに9月16日19時まで。唯一の応募資格は「学生の制作した作品」であること。審査員と評価員によるキックオフミーティングが7月24日木曜日18時よりDEPARTURE チャンネルDで配信予定である。
第20回学生CGコンテスト作品応募サイト
http://campusgenius.jp/2014/index.html
一部お名前に間違いがございました。お詫びして訂正致します。(2014年7月23日)