在日カナダ大使館は「第3回 日本・カナダ ゲームサミット」を実施した。イベントは2015年11月24日にカナダ大使館(東京都港区)、26日に京都リサーチパーク(京都府京都市)で開催され、日本とカナダのゲーム開発者がツールやバーチャルリアリティ(VR)ゲームの開発技術について議論。東京会場ではソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のワールドワイドスタジオでゲーム開発を統括する吉田修平氏も参加した。

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東京会場のパネルディスカッションの様子

アメリカに国境を接するカナダでは、1990年代からCGやゲームの制作会社が集積しはじめ、今日では大手企業の多くが制作スタジオを構えるまでになっている。背景にあるのが税制控除をはじめとした産業支援で、連邦制のもとで海外企業の誘致合戦が各州で行われている。こうした背景をもとに、在日カナダ大使館の主導で2013年から毎年ゲーム開発者向けの会議が行われており、今回ははじめて関西でも実施されることになった。

【優れたツールを作る条件とは何か?】

イベントはUBIソフト・モントリオールのデビッド・ラウトバウン氏による基調講演と、ゲーム開発者によるパネルディスカッションの二部構成で行われた。ツール制作が専門で、看板タイトル『アサシン クリード』の開発も支援するラウトバウン氏は、ゲーム開発者を観察し、彼らが何を本当に望んでいるかを知ることが、優れたツールの開発には欠かせないと指摘。聴講者に即興で壇上に上がってもらい、ハサミと十徳ナイフで紙を切らせるなどの趣向もふまえて、理想のツール開発について語った。

パネルディスカッションのテーマはバーチャルリアリティ(VR)ゲームの開発についてで、東京会場ではゲームジャーナリストの新清士氏による司会のもと、SCEの吉田修平氏、オーディオキネティックのマーティン・クライン氏、エンザイムの池田英一氏、エピックゲームズジャパンのロブ・グレイ氏、サイド・エフェクトの多喜健一氏がパネリストとして登壇。京都会場では筆者(小野憲史)の司会で、カプコンの伊集院勝氏、オーディオキネティックの中村靖氏、エンザイムの池田英一氏、サイド・エフェクトの多喜健一氏が登壇した。

【VRゲームの開発で最も重要なこと】

パネリストのうち吉田氏と伊集院氏は主にゲーム開発者側の視点で、VRゲームにおける制作スタイルの違いや留意点などについて語った。これに対して他のパネリストはミドルウェアやサービスベンダーの視点で、VRゲーム開発に対する自社製品の貢献度について語られた。いずれもVRゲーム開発においては、低品質なコンテンツにつきものの「VR酔い」をいかに回避させるかが最も重要な課題だとコメント。そのためにはゲーム開発の効率化が必用で、ツールやミドルウェアなどの適切な活用が不可欠だとされた。

カナダ大使館商務部二等書記官で、サミットを企画・実施したアキコ・オノヅカさんは、世界のゲーム産業におけるカナダの優位性をアピール。すでに数多くの日本企業がカナダでスタジオを設置している現状を紹介しつつ、今後も両国間での交流を深めていきたいと話していた。