イギリスの公営テレビ局チャンネル4の深夜枠にて短編映像を毎日放映する「ランダム・アクツ Random Acts」が話題を集めている。「ランダム・アクツ」はチャンネル4が外部のスタジオ等に3分程度の短編映像制作を依頼し、その成果を放送するものである。2011年から開始されたこの番組は、これまでに200本以上の短編作品を放映している。
1982年に開局したチャンネル4は、マジョリティへと向けられる従来のテレビ用コンテンツとは異なる先鋭的・実験的な番組作りを標榜するテレビ局で、アニメーション、とりわけインディペンデント作品との関わりも深い。番組制作を局内ではなく外部委託で行うチャンネル4では、アニメーションの制作委託も積極的に行ってきており、設立当初のアードマン・スタジオの短編作品制作の場となるなど、イギリス・アニメーション史において重要な役割を果たした。フィル・ムロイ氏やブラザーズ・クエイ(クエイ兄弟)など現代のイギリスを代表する作家を育成する場ともなった。しかし、2000年代の規模縮小によってチャンネル4とアニメーションとのつながりは希薄となり、それに伴いイギリスのインディペンデント・シーンも下火となっていた。
「ランダム・アクツ」は、チャンネル4とアニメーションがつながりを持つ新たなきっかけとなっている。制作される作品の中でのアニメーションの割合はそれほど高くないが、フィル・ムロイ氏やデヴィッド・シュリグリー氏らベテラン作家から、スティーヴン・アーウィン氏やジュリア・ポット氏などの新鋭まで、優れた作家の新たな作品の発表される場所として機能しはじめている(フィル・ムロイ氏の2012年作品『The Banker』は、先日開催されたオタワ国際アニメーション映画祭の短編部門に入選している)。
なお、「ランダム・アクツ」の制作委託作品は、全てオンラインで公開されている。
チャンネル4関連では、1990年代に同チャンネルでアニメーション専門のコミッショニング・エディターを務めたクレア・キッソン氏が、2012年11月11日、東京藝術大学大学院映像研究科の公開講座「コンテンポラリー・アニメーション入門」において、上映を含めたレクチャーを行う。
他の関連するニュースとしては、『ラビット』(2005)などの代表作をチャンネル4で制作したアニメーション作家故ラン・レイク氏の急逝がある。48歳だった。レイク氏は今年、癌と闘病中であることを公表、その体験を元にした短編作品Down with the Dawnをオンラインで公開していた。
ランダム・アクツ公式ホームページ
http://randomacts.channel4.com/