イギリスで実験アニメーション作品の製作・保存・配給を行っているAnimate Projectsが、新プロジェクトCELの開始を発表した。CELは、過去にAnimate Projectsで制作を行った作家たちが寄贈した原画などの資料を公に販売することにより、来年の運営を可能にするだけの資金5000ポンドを集めることを目的とするものである。

Animate Projectsは、実験アニメーションの人材育成と作品制作の場を提供するプロジェクトAnimate!の後継プロジェクトとして2007 年に設立され、インターネット上での作品発表とアーカイブ化を主に行ってきた。Animate! は、イギリス・アニメーションの黄金期とされる1980年代から1990年代に主な作品製作の拠点となった公営テレビ局「チャンネル4」がイギリスのアーツ・カウンシルとともに立ち上げたものである。

新たなアニメーション表現の創出という目的から、Animate Projectsが考えるアニメーション概念は幅広く、例えば、過去にはタイの映画監督アピチャッポン・ウィーラセタクン氏など、多分野での活躍著しい作家も作品を発表している。

今回、Animate Projectsがこのようなプロジェクトを立ち上げた背景には、イギリスにおけるアニメーションの公的助成の大幅な削減がある。1980年代と1990年代のイギリス・アニメーションの盛況を支えた要因であった、公営テレビ局やブリティッシュ・フィルム・インスティテュートなど公的組織が行う製作助成は近年になって規模を大幅に縮小した。また、アーツ・カウンシルが長年行ってきたAnimate Projectsに対する助成も2010年度を最後に打ち切られた。

 今回発表されたCELは、そのような状況の中で、プロジェクトの運営およびオンライン上のアーカイブ「Animate Collection」の維持を来年度も可能にするために考案された新しい試みであるといえる。CELのホームページでは、ラン・レイク氏、ペトラ・フリーマン氏、ポール・ブッシュ氏などが提供した原画などのアートワークを購入することができる。

なお、Animate Projects製作の作品は同プロジェクトのホームページ上のオンライン・アーカイブで鑑賞可能である。また、関連のイベントとしては、現在ロンドンで開催中のCanary Wharf Screenにも注目したい。同イベントは、ロンドンの地下鉄での芸術作品展示を行うプロジェクトArt on the Undergroundの一環で、キャナリー・ワーフ駅に巨大スクリーンを設置し、Animate Projectsをはじめとしたロンドンの主要な映像関連組織に上映のキュレーションを依頼するものである。Animate Projectsは2012年5月31日から8月26日までの上映を担当し、その後、LUX、British Film Instituteといった著名な映像関連組織が引き継ぐことが決定している。

Animate Projects公式ホームページ
http://www.animateprojects.org/

CEL公式ホームページ
http://pinterest.com/animateprojects/cel

Canary Wharf Screen公式ホームページ
http://art.tfl.gov.uk/