米サンフランシスコで毎年3月に開催されるゲーム開発者会議「GDC(Game Developers Conference)」では、さまざまなゲームアワードが実施される。今年もインディ(独立系)ゲームを対象とした「IGF(Independent Game Festival)」[http://www.igf.com/]と、一般ゲームが対象の「GDCA(Game Developers Choice Award)」[http://www.gamechoiceawards.com/]の発表授与式が2017年3月1日(現地時間・以下同様)に実施された。GDC主催団体の米UBM Techによるもので、GDCの特別イベントという位置づけだ。
これに対してGDC期間中の2017年2月28日には、市内でモバイルゲーム向けのアワード「IMGA(International Mobile Gaming Awards)」[http://www.imgawards.com/]の発表授与式も行われた。主催は仏IMGAで、毎年2月に西バルセロナで開催される携帯電話と関連技術の国際見本市「MWC(Mobile World Congress)」で開催されてきたが、2015年から開催地が変更になった。ゲーム開発者が集まるGDCの知名度や参加者の利便性を考慮してのことだ。
2017年度のIGFでは一人称パズルアクションの「Quadrilateral Cowboy」(Blendo Games)が大賞(Seumas Mcnally Grand Prize)を受賞した。GDCAでは同じくアリーナシューターの「オーバーウォッチ」(ブリザード・エンターテイメント)が大賞(Game of the Year)を受賞。IMGAでは人気キャラクターが登場するARゲーム「ポケモンGo」(ナイアンテック)が大賞(Grand Prix)に、それぞれ輝いた。
半導体の技術進化によって進化するゲームの特性を反映して、本年度はIGFでオリジナルのコントローラーを用いたゲームを顕彰する「ALT.CTRL.GDC AWARD」が新設された。初受賞の栄誉に輝いたのは、エアドームの内側と外側で二人のプレイヤーが協力しながら、洋館からの脱出をめざす「Fear Sphere」 (NewArcade Studio)だ。
内側のプレイヤーはプロジェクションマッピング技術を応用した探照灯型コントローラーを用いて洋館の模様を壁に浮き上がらせ、地図を持つ外側のプレイヤーと無線で情報を共有しながら、ゲームを進めていくという内容。GDCエキスポ会場では、これ以外にもさまざまなコントローラーを用いた個性的なゲームが並んだ。
GDCAではオバマ政権で科学技術政策アドバイザーに就任し、「ホワイトハウス教育ゲームジャム」も主導したマーク・デローラ氏が、ゲーム開発者コミュニティに多大な貢献を与えた人物に贈られるアンバサダーアワードを受賞した。デローラ氏はアメリカ任天堂をはじめ、数々の大手ゲーム開発者で働きつつ、著書「プログラミングジェムズ」の初期シリーズを執筆するなど、長年にわたるゲーム開発と人材教育が評価された。
IGFはインディゲームの振興と知名度増加、GDCAはゲーム開発者の投票ベースで顕彰される「ゲーム版アカデミー賞」、IMGAはモバイルゲームの振興と知名度増加を目的としており、それぞれ異なる文脈を持つ。GDCAで個人への顕彰が充実しているのも、こうした理由からだ。しかし、インディゲームもモバイルゲームも急速に進化を遂げており、全てのアワードで共通して受賞するタイトルが増加するなど、3つのアワードの境界が曖昧になりつつある。
その一方で、かつては日本ゲームがアワードの常連となっていたが、近年では部門賞でノミネートされるに留まっている。ゲームの基礎技術が向上し、アワードの区分けがなくなりつつある一方で、ゲームの地域性がより高まっているのだ。日本では東京ゲームショウで毎年「日本ゲーム大賞」や「センスオブワンダーナイト」が開催され、中国・韓国でも独自のゲームアワードが行われる。それぞれ、国柄や地域文化を反映した個性的なゲームが顕彰されている。
いわゆる「ゲーム開発の民主化」に伴い、年間で制作・販売されるゲームの数は文字通り星の数ほどになっている。そのため、こうしたアワードでの受賞はゲームのプロモーションを行う上で大きなチャンスとなる。各地域の文化を反映した、個性豊かなゲームが開発され、各地のアワードを通して世界中に喧伝される時代の到来が期待される。