荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズは、2017年で30周年となる。その記念として、今年実写映画化された第4部『ダイヤモンドは砕けない』と最新シリーズ第8部『ジョジョリオン』の舞台「S市杜王町」のモティーフとされる仙台市で、「荒木飛呂彦原画展ジョジョ展 in S市杜王町 2017」が開催された。

ファンにとって、そして荒木自身にとって思い入れの深い場所に

2017年、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズが30周年を迎えた。この作品の作者である荒木飛呂彦が仙台市出身であり、「ジョジョ」シリーズの第4部「ダイヤモンドは砕けない」および現在連載中の第8部「ジョジョリオン」の舞台である架空の街「S市杜王町」は仙台市がモティーフであることはファンの間ではよく知られているとおりだ(註1)。荒木本人も「JOJOの中の“S市杜王町”はおそらくですが仙台市の事です。それは誇りに思います。」と展覧会カタログ内で語っている(註2)。そういった縁もあり、今夏仙台市では「ジョジョフェス in S市杜王町」と名付けられたイベントが催され、その中心としてせんだいメディアテークにおいて5年ぶり2回目となる原画展「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町 2017」が開催された(註3)。(図1) 公式パンフレットでは下記のように書かれている。

漫画本編の「モノクロ原稿」300点以上(会期途中での入れ替え分含む)が展示される。これは初めてのことだし、本原画展最大の特徴だ。さらにカラー原画も最新のもので180点以上、総展示点数は500点近くというグレートなボリューム(註4)。

展示室では、「ジョジョ」以前の作品の原画が展示され、続いて「ジョジョ」第1部~第3部、第5部~第7部の原画と造作物が壁に沿って並び、荒木の作風の変化を一望することができた。(図2)そして第4部と第8部のみ、展示室中央の広大なスペースに展示されたが、その展示方法は来場者の目を楽しませる仕掛けが施されたものだった。
まず目に飛び込むのは、随所に設置された第4部の単行本を模した大きなオブジェである。それぞれの単行本に所収されている内容の原画が、単行本型のオブジェに展示されたほか、登場するスタンドやモティーフの造作物がオノマトペ(擬音語)つきで飾られるなど、目にもにぎやかな展示がされていた。(図3~4)
また本展示の特徴のひとつとして、写真撮影が可能な造作物が多かったことが挙げられる。原画自体は撮影禁止であったものの、第4部の単行本の中に入り込んでスタンドのイラストをバックに写真撮影ができるフォトスポットなどがあり、来場者たちの写真を撮りたいという欲求を解消できるようになっていた。(図5~6)
そして第4部のオブジェの先には、2011年に起きた震災によってM県S市に現れたという「壁の目」についての報告と、白い家が再現されている。「ジョジョ」の読者はすぐにここから第8部の展示だということがわかるだろう。(図7)
第8部の展示では、記憶喪失の主人公が住むことになる家が再現され、その真っ白な部屋の中に原画が展示されていた。(図8)第4部のにぎやかな雰囲気から一転し、静かで薄暗い家の中にはプロジェクションによってスタンド能力が投影されるなど不気味な演出がなされ、インスタレーションともいえる展示内容により作品世界への没頭感が深まるような仕掛けがされていた。

左から、図1 仙台 FORUS 広告、図2 展示室入口

左から、図3〜8 展示室内

実際の都市と架空の都市がひそやかにリンクする

本展覧会を中心として仙台市内で開催された「ジョジョフェス」では様々な場においてコラボレーション企画が催された。マンガやアニメのモデルとなった場所を訪れる「聖地巡礼」はすでに一般的なものとなっているが、「ジョジョ」第4部・第8部においては具体的な場所は描かれていないため、地元のファンも遠方のファンも、このフェスにより仙台の街を通常の観光とは違うかたちで楽しむことができただろう。展示室内でも作者である荒木が仙台の街を歩きながら語る「アラキ×アルキ」なる映像も流れており、作者自身の穏やかな口調で故郷について語る姿を見ることで、仙台という特別な場で展覧会を見たという記憶を持ち帰ることができただろう。(図9~16)

左から、図9〜11 商店街
左から、図12 マンホール、図13〜14 オーソン
図15 ごま蜜だんご、図16 バス停

(脚注)
*1
「ジョジョ」第4部は、それまで海外が主な舞台であった第1部から第3部と異なり、「S市杜王町」という日本の郊外都市が舞台となった。それまでの世界規模の壮大なストーリーから一転し、高校生たちの日常と街の中で起きる事件という閉じられた世界の中での物語である。また、東日本大震災以降に連載が始まり、その影響が見られる第8部「ジョジョリオン」においては記憶喪失の主人公が「『呪い』を解く物語」であり、第4部とはパラレルワールドという位置づけがされている。
*2
『荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町 2017公式パンフレット』集英社、2017年、65頁
*3
会期は2017年8月12日(土)~9月10日(日)
*4
同書、2頁。

荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町 2017
会期:2017年8月12日(土)~9月10日(日)
休館日:8月24日(木)
入場料:大人2,000円、高校生以下1,200円
会場:せんだいメディアテーク 6階ギャラリー
http://jojofes.com/gengaten/