ギネスブックにも認定された世界最大のゲームジャム「Global Game Jam (GGJ) 2019」(主催:国際非営利団体Global Game Jam)が2019年1月25日(金)から27日(日)まで開催され、全世界で47,000人が参加し、113カ国・地域の860カ所に及ぶ会場で期間中に9,000本のゲームが作成された。筆者は総合学園ヒューマンアカデミー秋葉原校の協力のもと、同校で運営責任者を担当し、社会人・学生ら36名が参加。6本のゲームが完成した。ゲームは公式サイトからダウンロードできる。

「Global Game Jam」ホームページより

秋葉原という場所ならではの参加者

「Global Game Jam」はスキルも経歴も雑多なゲームクリエイターが即席のチームをつくり、30時間もしくは48時間を費やして、ひとつのテーマでゲームを企画し、開発し、完成させるイベントだ。概要については2年前のレポートに詳しいので、本稿では本年行われたヒューマンアカデミー秋葉原校会場ならではの特徴について共有させていただきたい。同校でゲームジャムが開催されるのは初めてで、参加者がどの程度集まるか不明だったが、蓋をあけてみれば36名が参加するという、ほぼ狙い通りの規模感となった。

一方で嬉しい誤算となったのが、参加者の多様性だ。第一に社会人が19名、学生が17名と約半々(うち大学生が8名、専門学校生が9名)にのぼったこと。特に大学生はゲーム業界志望だが、ゲーム開発者教育を行っていない大学や学部からの参加者が大半で、GGJが就職活動のきっかけづくりになっている実情が感じられた。また外国人参加者が10名と全体の28%に及び、なかには日本旅行の合間に参加したケースも見られた。総じて交通の利便性が高い秋葉原という地理的特性の影響が強く感じられる結果となった。


チーム割りは参加者の経歴やスキルなどを考慮して事前に運営側で決定された

あなたにとって家とは何ですか?

GGJは世界規模で開催されるため、テーマ選びは非常に重要な課題のひとつだ。今年度のテーマは「WHAT HOME MEANS TO YOU(あなたにとって「ホーム」が意味するもの)」となり、参加者それぞれの「家」に対する価値観が問われるものになった。そのうえで興味深かったのは、6チーム中2チームで「親にテレビゲームを禁止されたり、廃棄されたりした思い出」をベースにゲームが制作されたことだった。ゲームのし過ぎに対して親が難色を示す傾向は、国境を越えて共通の価値観のようだ。

Global Game Jam 2019 Keynote and Theme

開発は総じて日本語で行われたが、日本語でのコミュニケーションが苦手な外国人参加者も見られた。また、外国人の割合が高いチームでは、自然と日本語と英語を交えた開発風景が見られた。特に「企画会議でアイディアを摺り合わせるのに苦労した」という声が聞かれた。ただし、一度開発が始まってしまえば、比較的スムーズに進行していたようだった。また、学生参加者のなかには社会人参加者から学校で習わない、先進的な開発技術を学びながら開発を進める例もあり、ゲームジャムの教育的効果の高さが感じられた。


ゲーム開発を通して自然に交流が生まれていく参加者たち

ゲームジャムでは開発時間が限られるため、終盤になると食事に行く暇も惜しんで開発が進められる。そのため会場の中では軽食類が振る舞われる例もみられるが、本会場でも協賛社からの協賛金ですべて賄われ、参加者が開発に集中できる環境が整えられた。特に中間発表の後でピザをつまみながらピアレビュー(参加者同士での相互レビュー)が行われ、参加者間での相互交流や、ゲームの完成度向上に貢献した。また「企画発表」「中間発表」「最終発表」では、各チームともに工夫をこらした発表が行われた。

キャッチーなプレゼンテーションで期待を高めるのも重要な要素になる

72時間で開発された6本のゲーム群

制作された6本のゲームについて、一つひとつ説明していく。

チーム1『Nemo’s Guardian』

魔弾を発射する特殊能力をもったイソギンチャクの子どもが、広大な海底で迷子になったクマノミとともに自分の居場所を探していくアクションシューティング。プレイヤーはイソギンチャクを前後左右に移動しつつ、迫り来る外敵に対して魔弾を発射して撃退できる。敵を倒すと経験値が得られ、パワーアップもできる。

チーム2『Psycho Mothers -サイコマザー-』

「人類みんな家族」をテーマに掲げた、いささかブラックなアクションゲーム。プレイヤーは「おかあさん」となって、制限時間内に広場からできるだけたくさんの「子ども」を家に連れて帰ることが目的。ゲーム中に出現するさまざまなアイテムでほかの「おかあさん」の邪魔もできる。ゲームパッドでの操作に対応しており、最大4人対戦で楽しめる。

チーム3『Global Santa Claus “Santa’s Gift”』

全世界の子ども達に夢とプレゼントを与えるサンタクロース。プレイヤーは、そんなサンタクロースが営む夢屋「Santa’s」の店長となり、常連客の好むプレゼントを提供して、居心地の良い空間をつくることが目的。適切にプレゼントを与えていくと、お店が常連客でにぎわっていく。1人だけでなく2人対戦も楽しめる。

チーム4『Son vs Mama』

主人公はゲーム好きの子どもで、自室で母親の目を盗みながらゲームを遊んでいく。ゲームを遊んでいる姿を母親に見つかるとAngerゲージがたまり、ゲームを遊ばないでいるとFunゲージが下がって、どちらもゲームオーバーに一直線。ステージクリアごとに母親の数が増えるなか、いかにバランスを保ち続けられるかがポイントだ。

チーム5『Home.io』

オンラインマルチプレイヤーゲームで、ほかのプレイヤーの攻撃から身を守りつつ、食料を食べて体力を保ち、できるだけ長時間生き続けるゲーム。時間経過とともに年齢が加算されていき、体力が減る速度もアップする。マップ上に点在する家に到着すると世代交替が発生し、自分の年齢を若返らせることが可能だ。

チーム6『Find the Game』

ゲーム嫌いの家庭に生まれ育った少年が、深夜に布団の中で遊ぶために、家の中に隠されたゲーム機を探し出すステルスゲーム。プレイヤーは「ぼうずちゃん」を操作して、母親が隠したゲームボーイを探し出し、自室に無事戻れればクリアだ。母親は足音に敏感なので、うまく隠れたり、やり過ごしたりして進んでいく。

GGJは開催期間が入試と重なるため、日本では大学での開催が難しい。そのため本会場のように、専門学校が開催の受け皿になる例がみられる。一方で今年度はコワーキングスペースなどの商業施設が増加した点が特徴的だった。日本国内19会場のうち内訳は商業施設7、大学3、専門学校6、企業3で、地域の特性にあわせて、さまざまな多様化が進んでいることが感じられる。個人的にも初めて運営責任者を務めたこともあり、思い入れの強い会場となった。GGJ2020でも開催が続けられるように努力を進めていきたい。


(information)
Global Game Jam 2019
会期:2019年1月25日(金)~27日(日)
http://globalgamejam.org

 ヒューマンアカデミー秋葉原校会場
 http://globalgamejam.org/2019/jam-sites/human-academy-akihabara
 入場料:2,000円

※URLは2019年2月5日にリンクを確認済み