令和2年度メディア芸術連携基盤等整備推進事業 連携基盤整備推進事業の最終報告会が、2021年2月19日(金)に東京・外苑前のnote placeおよびウェブ会議システムZoomにて開催された。メディア芸術連携基盤等整備推進事業は、産・学・館(官)の連携・協力により、メディア芸術の分野・領域を横断して一体的に課題解決に取り組むとともに、所蔵情報等の整備及び各研究機関等におけるメディア芸術作品のアーカイブ化の支援をすることで、文化資源の運用や展開を推進する事業だ。新たな創造の促進と専門人材の育成により、メディア芸術作品のアーカイブ化を継続的・発展的に実行していく協力関係の構築を目指している。最終報告会では、本事業の一環として実施した「連携基盤強化事業」の6事業の取り組みの主旨や進捗状況の報告、企画委員・有識者タスクチーム員と報告者による質疑応答がなされた。本稿ではそのうちの「マンガ刊本アーカイブセンターの実装化と所蔵館ネットワークに関する調査研究」について記載する。
概要
マンガ刊本アーカイブセンター(仮称)の実装化に向けた調査研究と情報収集、機関連携による刊本保存・利活用計画の立案、所蔵館ネットワークの構築を行う。アーカイブセンターでは、横手市増田まんが美術館内の原画アーカイブセンターと情報資源・人材を共有し、公開する機会を計画的に創出、統合的かつ体系的なマンガアーカイブの連携基盤整備を推進する。将来的には、全国のマンガ関連施設・機関と連携し、人・モノ・情報の集約とマンガ資料の保存・利活用を構想する拠点として整備する。また、全国の連携館からマンガ雑誌・単行本を収集、複本プールに保管、利活用を図る。複本プールは、刊本資料に関する見識を持ったアーキビスト育成の場としても機能させる。デジタルアーカイブ化や刊本資料を活用したビジネス展開、自立したマネジメント手法の確立も視野に入れている。
最終報告
国立大学法人 熊本大学
報告者:熊本大学 文学部 准教授 鈴木寛之
前年度に引き続き、全国のマンガ関連施設・大学図書館等への刊本移送や調査を行った。熊本・高知県内の廃校や空き店舗を利用した複本プールの稼働が進んでおり、地域活性化にも貢献している。
各自治体との所蔵館ネットワークも構築されつつあり、公共図書館等に対して、その地域に関連する作家・作品リストといった情報提供も考えている。今後は、出版社やマンガ家とも連携し、より意義のある、広義のアーカイブ構築を模索していく。刊本資料の扱いについては、高知まんがBASEのように、実際に読める状況にあることでマンガ雑誌の魅力を伝えることも刊本アーカイブのひとつの核と言える。しかし、消耗品として利活用する一方、アーカイブ資料としての保存も重要であり、両者のバランスは検討すべきである。課題として、育成された専門人材が収まるポストの創出、センターを維持するための収益確保等があるが、アーカイブ協議会にて情報交換・検討のうえ、進めていきたい。
鈴木寛之
左:企画委員の吉村和真(京都精華大学 常務理事、副学長、マンガ学部 教授)
右:企画委員の赤松健(公益社団法人 日本漫画家協会 常務理事/マンガ家)
※敬称略