日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)教育専門部会(SIG)はオランダ王国大使館との共催で「第1回シリアス&アプライドゲームサミット」[http://www.mediadesignlabs.org/SUMMIT/]を2017年2月24日に開催した。会場となったオランダ駐日大使館では産業界・学術界から約50名が参加し、シリアスゲームとアプライドゲームの現状や可能性について議論が行われた。

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オランダ駐日大使館でサミットを開催

シリアスゲームは教育・医療・公共政策など、社会の諸問題解決を主目的とするデジタルゲームの概念で、2000年代に入って欧米で提唱された。もっとも当初は「真面目な(=シリアス)ゲーム」と唄ったように、ゲームに対する抵抗感の払拭が課題だった。

しかしオランダでは2016年で国内ゲーム会社455社のうち41%がシリアスゲーム開発に携わるなど、産業として定着。シリアスゲーム先進国として国際的な評価が高まった。近年では「アプライド(=応用)ゲーム」という呼称に変更が進むなど、「シリアス」と銘打つ必要がなくなっている。

これに対して日本では同時期に概念が紹介されたものの、Wiiの健康ゲームやニンテンドーDSの知育ゲームを中心に、一過性のブームとして消費された感がある。もっともオランダ側でもシリアスゲームの商業化や国際展開が課題で、シリアスゲームの活性化や認知度向上をめざしたい日本側と思惑が一致し、今回のサミット開催となった。

サミットは実行委員長をつとめた岸本好弘氏(東京工科大学)の開会宣言「ゲームの力で世界を救おう!(Let's save the world by the power of Game!)」で始まった。その後、藤本徹氏(東京大学)の基調講演「シリアスゲームへの期待」を皮切りに、「教育・訓練」「医療・福祉」などの分野で内外の関係者が登壇し、事例紹介が行われた。

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岸本好弘氏(東京工科大学)

会場では両国のシリアスゲームもデモ出展された。千葉大学とグリーがハッカソンを通して開発した「小学校教科教育支援用・学習ゲーム」[http://mediag.bunka.go.jp/article/gree_chiba-5418/]や、第5回シリアスゲームジャム[http://mediag.bunka.go.jp/news/cat2/55.html]で開発された「ゴーゴンの館」「てくてくロボット」、九州大学がリハビリ目的で開発した「ロコモでバラミンゴ」、島根大学が開発した視線入力ゲーム「EyeMoT」、ユトレヒト芸術大学とMonkeybizniz Inc.が開発した一連のシリアスゲームなどだ。参加者はそれぞれのゲームを楽しみながら交流を深めていた。

このほかNTTコミュニケーションズとサクセスから、「セキュリティリテラシ向上のための社会人向けシリアスゲームトライアル〜攻撃者目線を取り入れたゲームの組織内展開の効果と苦悩」と題して、同社が企業向けに販売中のシリアスゲームに関する開発事例も共有された。企業で被害が急増中の「標的型メール攻撃」について、被害者視点だけでなく攻撃者視点からも学べる点が特徴で、通信会社とゲーム会社という、両社の企業文化の違いを乗り越えながら開発が進んだ様子が説明された。

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日本とオランダで数々のシリアスゲームが展示された

オランダ駐日大使館では近年、東京ゲームショウで企業の出展支援を行うなど、日本市場での取り組みに力を入れている。大使館のライテ・ドウマ氏も「シリアスゲーム関連企業の活動支援や、ローカライズに関する研究などを進めていきたい」とコメント。実行副委員長をつとめた古市昌一氏(日本大学)も、本サミットを教育SIGの主要活動として、継続開催していきたいと抱負を語った。