ゲーム見本市「E3」(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)が2014年6月10日から12日(現地時間)まで、米ロサンゼルスで開催された。昨年(2013年)末に米国で相次いで発売されたPlayStation(PS)4とXbox One、1年先行したWii U向けに、年末商戦向けの重点ソフトが数多く出展され、完成度をチェックする業界関係者でにぎわった。
ゲーム開発の大規模化に伴い、サードパーティの多くは1本のソフトを多ハードで展開するマルチプラットフォーム戦略を採用している。昨年度は現世代機と旧世代機で同じソフトをグラフィックだけ変更して出展する例が中心だったが、今年度は旧世代機を切り捨て、PS4・Xbox One・PC向けのハイエンドに特化する例が増加した。
また、PS4を展開するソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)と、Xbox Oneを展開するマイクロソフトは、どちらも自社開発の専用ソフトを出展した。総じてサードパーティ製のソフトと共に、最先端の技術をふんだんに活用した大作ソフトが目立った。
PS4向けでは19世紀のロンドンが舞台の一人称視点ホラーシューティング「The Order: 1886」や、カジュアルアクションにステージ制作・配信などの機能も加えた「Little Big Planet 3」(共にSCE)などが、ゲーム機メーカーが投入する大型タイトルとして注目を集めた。Xbox One向けでは同じくアメコミタッチのアクションシューティング「Sunset Overdrive」や、人気レースゲーム最新作「Forza Horizon 2」(共にマイクロソフト)などが好評だった。
またサードパーティ製ソフトでは、人気アメコミヒーローが活躍する「バットマン アーカム・ナイト」(ワーナー・ゲームス)、フランス革命を舞台に歴史の影でアサシンが暗躍する「アサシンクリード ユニティ」(UBIソフト)、宇宙の星々が舞台のSF一人称視点シューティング「Destiny」(アクティビジョン)などが話題を集めた。
技術面では広大なフィールドを冒険する「オープンワールド」、大量のNPCキャラクターが登場する「マッシブ」、常時接続を前提として、シングルプレイとマルチプレイの境界をなくす「シームレス」といった傾向も見られた。
技術面ではPS4とXbox Oneに劣るWii Uでは、サードパーティ製のタイトル数は減少したものの、任天堂を中心に強力なラインアップを展開した。人気対戦アクションのシリーズ最新作「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」は一番人気となり、ペンキの弾丸を撃ち合って陣取りを行う「スプラトゥーン」は驚きをもって迎えられた。人気シリーズ「ゼルダの伝説」の最新作がオープンワールドになることも発表された。
国内メーカーではバンダイナムコゲームスが「ドラゴンボール」シリーズの最新作「ゼノバース」を、PS4、PS3、Xbox One、Xbox 360向けに発表し、デモ画面を披露するなどした。セガも人気キャラクター・ソニックが主役のCGアニメ「ソニック ブーム」が今秋からアメリカとフランスでテレビ放映されるのにあわせて、Wii Uとニンテンドー3DS向けに新作ゲームを出展したほか、フィギュア販売もからめたメディアミックス展開を打ち出すなどした。
一方で発表の中には、2015年以降の発売タイトルも少なからず見られた。もともとE3は年末商戦向け重点ソフトの商談・宣伝を目的とした見本市で、来年度以降のタイトル発表は本来の趣旨とは外れている。しかしゲームの大作化に伴い、中には2年越し、3年越しで発表されるゲームもあるほどだ。これに伴いタイトル数の減少も続いている。米ゲームメディアのポリゴンは今年度のE3で出展企業数が13%減少し、約200社になったと伝えた。
家庭用ゲーム機各社はタイトル数の減少を、インディーズ(独立系)ゲームで補填する戦略だが、これらはデジタル配信タイトルであるため、E3のような見本市とはなじまない。E3を主催するESA(エンターテインメント・ソフトウェア協会)は年次報告書で2013年の米ゲーム市場におけるデジタル流通分が90億ドル(9000億円)と、パッケージ流通分の63億ドル(6300億円)を凌駕したと発表した。パッケージ流通からデジタル流通への移行は今後も続くと見られ、E3の存在意義も変化しそうだ。