元カプコンのゲームクリエイター、稲船敬二氏の新作ゲーム「Mighty No.9」でクラウドファンディングサイト「Kickstarter」による資金調達が行われ、2013年10月2日に募集が終了した。調達金額は384万5170ドルで、PayPalによる直接投資を含めると合計400万ドル以上(約4億円)の資金調達に成功した。「Kickstarter」における歴代6位の調達額で、ゲーム分野では4位となる。
「Mighty No.9」はロボットが主人公の横スクロールアクションゲームで、プレイヤーは戦闘用ロボットチーム「Mighty Numbers」の末っ子「ベック」を操り、暴走したロボットや兄弟機たちと戦っていくストーリー。敵を倒せば新たな能力を手に入れられ、手足が大きな磁石になって壁を登ったり、高速移動などの特殊能力が発揮できる。完成は2015年春の予定で、PCや主要ゲーム機向けに配信され、次世代機にも対応する。
プロジェクトの旗振り役を務める稲船敬二氏は、「ロックマン」「鬼武者」シリーズなど、数々のヒット作を生み出してきたゲームクリエイター。2010年にカプコン退社後はcomceptとinterceptを設立し、企業の枠に囚われない自由なゲーム開発を進めてきた。本プロジェクトでは過去の「ロックマン」シリーズを手がけた著名クリエイターが数多く参加しており、ゲーム本体の開発はインティ・クリエイツが手がける。
クラウドファンディングサイトは一般市民から特定のプロジェクトに対して資金調達を可能にするインターネット上のサービスで、Kickstarterはその最大手。本作の資金募集は2013年9月1日からスタートし、約40時間で目標金額の90万ドル(約9000万円)の調達に成功、さらに2週間後には調達額が220万ドルを突破した。
その後も調達額は増え続け、「1200万ドルで2ステージ追加」「2200万ドルでPS3・Xbox 360・Wii版の発売」など、調達金額に応じた16種類におよぶ追加仕様の設定が、すべて達成された。また、同作では今後もゲームの登場キャラクターを投票で選ぶなど、ファン参加型の施策が予定されている。PayPalでの支援も継続中だ。
クラウドファンディングは次世代の資金調達手段として注目を集めており、特に資金調達を得る機会が乏しかった個人や小規模制作集団にとって、福音となっている。「Kickstarter」以外にも国内外に様々なサービスがあり、2013年6月5日には日本のサイト「CAMPFIRE」で、ビル解体ゲーム「モンケン」が249万500円を調達した。将来的にクラウドファンディング機能をゲームプラットフォーム自体が取り込む可能性も考えられる。
一方で資金調達に失敗する、調達に成功してもプロジェクトが失敗する、完成品が支援者の期待にそぐわない内容に留まる例も見られる。またサービスの性質上、詐欺目的での出展を排除することが難しく、多くのサイトでは自己責任での支援を呼びかけている。「Mighty No.9」においても、どのようなゲームが実際にプレイできるか、注目される。