2012年8月12日より、ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art, New York, 通称MoMA)にて、「読唇術用の人形への薬剤師の処方箋を解読することについて(On Deciphering the Pharmacist’s Prescription for Lip-Reading Puppets)」と題された展覧会が開催されている。

この展覧会は、フィラデルフィア出身で、現在はロンドンで活躍する双子の人形アニメーション作家ブラザーズ・クエイ両氏を取り上げるものである。両氏は、ヤン・シュヴァンクマイエル氏やワレリアン・ボロスヴィック氏をはじめとした東欧の映像作家やポーランドのポスター作家たちの影響が強い人形アニメーションによって著名となった。『ストリート・オブ・クロコダイル』(1986)などの短編作品や『ベンヤメンタ学院』(1995)などの長編、ミュージックビデオなど様々なフォーマットで活躍する彼らのアニメーション作品は、日本においても人気が高い。

近年、ブラザーズ・クエイの両氏は、アニメーションに限らず、舞台美術を担当したり、ダンス映画を監督するなどますます活動の幅を広げており、この展覧会は、そういった活躍についても取り上げる。また、未発表の映像やドローイング作品なども展示されており、見逃すことのできないものとなっている。

ブラザーズ・クエイをめぐっては、2010年にイギリスの研究者スザンナ・ブッチャン氏(UCA芸術大学教授)がThe Quay Brothers: Into a Metaphysical Playroom
 
(University of Minnesota Press, 2010)を出版するなど、評価の波が再び高まっている。また、今回の展示に合わせて、展覧会の担当キュレーターのロン・マグリオッツィ氏とゲント王立美術アカデミー講師エドウィン・カレルズ氏がブラザーズ・クエイ両氏とともに共同執筆したカタログも出版される。

なお、MoMAにおいては、過去、ピクサー展やティム・バートン展が開催されているが、その両方にロン・マグリオッツィ氏がキュレーターとして関わっており、氏の存在はMoMAにおけるアニメーション関連の展示の強さを考えるうえで、重要であるといえる。

「読唇術用の人形への薬剤師の処方箋を解読することについて」展は、2012年1月3日までの開催。

展覧会公式ホームページ

http://www.moma.org/visit/calendar/exhibitions/1240