2012年2月9日から19日まで開催された第62回ベルリン国際映画祭の短編部門で、和田淳監督の新作『グレートラビット』(2012)が準グランプリ相当の銀熊賞(審査員賞)を受賞した。グランプリにあたる金熊賞には、ジョアン・サラヴィザ監督の実写映画『ラファ (Rafa)』(2012)が選ばれている。ベルリン映画祭はカンヌ、ベネチアと並んで世界的に注目度の高い国際映画祭で、日本のアニメーション関係では、過去、2002年に宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001)が長編部門で金熊賞を受賞している。
和田淳監督は東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の第一期生で、修了制作『わからないブタ』(2010)は、2010年度(第14回)文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞、スイスのファントーシュ国際アニメーション映画祭やロンドン国際アニメーション映画祭でグランプリを獲得するなど、アニメーション専門の映画祭を中心に世界的に高い評価を受けた。オタワ国際アニメーション映画祭やポーランドのアニメーター映画祭をはじめ、日本の若手を代表するアニメーション作家として、回顧上映が組まれる機会も多い。今回の受賞は、『グレートラビット』の前作『春のしくみ』(2010)がベネチア国際映画祭オリゾンティ部門にノミネートされるなど、実写も交えた映画祭においても注目が高まりつつあったなかでのものである。
『グレートラビット』はフランスの製作スタジオ、サクレブルー・プロダクションズ(Sacrebleu Productions)とCaRTe bLaNCheの共同製作作品で、「不服従」をテーマとした若手作家の連作短編シリーズの一編として作られたフランス作品である。サクレブルー・プロダクションズでは過去、瀬戸桃子監督が『PLANET Z』(2011)を制作しており、日本人監督とも馴染みは深いが、日本の短編作家が海外のスタジオで作品制作をおこなう例自体は全体的にはまだ少ない。今回の受賞は、日本の作家が制作を続けていくための新たな選択肢として、海外制作という道筋を示した点においても、大きな意義をもつものである。
第62回ベルリン国際映画祭短編部門受賞作品