コンテンポラリー・アニメーション入門の今年度の詳細が発表された。同講座は東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻が主催する公開講座で、同専攻教授の山村浩二氏(アニメーション作家)が企画と進行を務める。
コンテンポラリー・アニメーション入門は、2009年度の第1回開催以来、海外で同時代に活躍するアニメーション作家の成果を一般向けに広く紹介する目的で継続的に開催されている。これまで、プリート・パルン氏、オルガ・パルン氏、キャロライン・リーフ氏、ギル・アルカベッツ氏といった世界の一線級で活躍する作家たちがこの講座を通じて招聘されてきた。
2012年度は、アニメーション作家のミシェル・レミュー氏とイゴール・コヴァリョフ氏、アニメーション研究者のクレア・キッソン氏が来日して講演を行う。
8月18日(土)は「ピンスクリーンの伝承」という演題でミシェル・レミュー氏の講演がある。たくさんのピンの陰影を操ることで描画を行う独自の技法ピンスクリーンは、発明者の故アレクサンドル・アレクセイエフ氏と故クレア・パーカー氏以降、唯一ジャック・ドゥルーアン氏のみが継承するものとなっていたが、レミュー氏は同技法を用いた久々の新作『此処と大いなる何処か Here and the Great Elsewhere』(2012)を発表した。レミュー氏は児童書の執筆でも有名で、日本でも『永い夜』(1999年、講談社)という邦題で絵本が出版されている。
10月6日(土)のテーマは「個人作品と商業作品」。講師のイゴール・コヴァリョフ氏はロシア初の私営アニメーション・スタジオであるピロット・スタジオの共同設立者を経て、ハリウッドに活動拠点を移し、テレビシリーズや劇場用作品に関わる傍ら、個人作品も発表している。2005年の『ミルク』は広島、オタワをはじめ数多くのアニメーション映画祭でグランプリを獲得した。
11月11日(日)はクレア・キッソン氏が「社会批評のメディアとしてのアニメーション:チャンネル4の歴史」というテーマで講演する。キッソン氏は、イギリス・アニメーションの黄金期といわれる1990年代、その中心的な拠点となった公営テレビ局チャンネル4においてアニメーション関連のプログラム選定と局製作の依頼作品の責任者として活躍した。退職後には、『『話の話』の話 アニメーターの旅 ユーリー・ノルシュテイン』(未知谷、2008 年)として邦訳も出版されたユーリー・ノルシュテインの歴史的名作『話の話』(1979)についての研究書Yuri Norstein and Tale of Tales : An Animator’s Journey (John Libbey Publishing, 2005)とチャンネル4作品を中心としたイギリス・アニメーションの歴史本British Animation: The Channel 4 Factor(Parliament Hills Publishing, 2008)の2冊の著書を出版するなど、執筆活動へと活躍の幅を広げている。
同講座は、入場無料・事前申込不要となっている。詳細についてはリンク先の公式ホームページを参照のこと。
コンテンポラリー・アニメーション入門2012
http://animation.geidai.ac.jp/ca2012/index.html
クレア・キッソン『『話の話』の話 アニメーターの旅 ユーリー・ノルシュテイン』(未知谷、2009年)
http://www.michitani.com/books/ISBN978-4-89642-187-3.html